「新愿成真」

許愿著「新愿成真」陳小春(チャン・シウチョン)の恩師ともいえる許愿(クラレンス・ホイ)が対談集を出版した。これは「新報」のコラム欄に連載されたものを纏めたものだ。
小春が許愿の星工廠を辞める時には、金銭的にもめたと言われていたのだが、2人の間は以前と変わりなかったようだ。この本「新愿成真」の巻頭に登場するのは小春だ。小春以外には、林子祥(ジョージ・ラム)、張艾嘉(シルビア・チャン)、李克勤(ハッカン・リー)、鄭伊健(イーキン・チェン)、張達明(チョン・ダッミン)、許志安(アンディ・ホイ)、石修、陳豪(チン・ホウ)など17人が登場、その中には元妻・李麗珍(ロレッタ・リー)も含まれている。
この中で小春は、初めて「風火海」としてテレビに出演したときのことも語っている。ちょっと引用してみよう。

・・・初めて歌手としてテレビの大きなショウに出演したときのことをよく覚えている。僕たち3人は、戦々恐々として林憶蓮(サンディー・ラム)についてスターの控え室に入った。本来、僕たち3人にとって紅館は知らない場所ではない。多くのコンサートでバックダンサーをしていたからだ。しかしその晩は、まったく違った感覚だった。何故なら僕たちはもうバックダンサーではなかった。その時のことは一生忘れない。その晩、香港の人気歌手のほとんどがその場にいた。僕たちが控え室に入っていくと、みんなとてもいい感じで、「ハイ! ハロー!」と声を掛けてくれた。しかし1分後、その場の空気に僕は総毛立った。その目は、虎視眈々と、そうそこには一匹の野生の豹や、どう猛な虎がいるようだった。いま思い出しても心臓がドキドキしてくる。

小春、ドキドキしながらも観察力が鋭い。前々から思っているのだが、小春は瞬間をつかみ取る能力に長けているように思う。ある刹那で物事の本質をつかみ取る能力だ。初期のころは演技でもそれが上手く発揮出来ていたように思う。演技の勉強なんかしていない小春は、その瞬間をつかみ取る能力だけで映画に出ていたんだと思う。少し前に、最近は考えて演技するようにしていると話していたのだが、考えて演技するから、今ひとつ突き抜けるものがないのでは思うのだ。本格的に演技の勉強をしたわけでなない小春には、考え過ぎはよくない。直感の方が正しいこともある。そろそろ小春の映画が見たい。よく考えた上に以前のように直感を研ぎ澄まして、瞬間をつかみ取りいい演技をして見せて欲しいものだ。