麥婉欣(ヤンヤン・マック)

麥婉欣(ヤンヤン・マック)、インディペンデント映画とMVは違う

Milk(M):監督という立場から見ると、映画を撮るのとMVを撮るのでは表現の方法に違いがありますか?
麥婉欣(Y):映画はひとつの物語だと思っています。従って自分で物語をコントロール出来る割合が大きい。しかしMVは、一貫して歌が主役なので、表現上は難しいことがあります。今回は、時間の問題。限られた資金と資材、時間と人力で、10倍かそれ以上の効果を出すことは不可能ですから。
M:いつからMVに携わっていますか?
Y:学生時代にすでに撮ったことがあります。あらゆる歌手はMVの制作を急いでいて、一日のうちに4曲撮ったこともあります。その時には利益が大きかったのですけど。海外の曲のMVは風景が主体でまるで旅行番組のようで、おかしいですね。
M:印象深いMVはありますか?
Y:どの歌といわれると、はっきりはいえないけど、張國榮レスリー・チャン)のMVはどれも印象深いです。彼の毎回の表情、動作のどれもが忘れがたいですね。これは私の職業病かもしれませんが、達明一派の常に動いているシーンも印象深いです。
M:資金以外に、どんなところが他国のMVと違うところだと思いますか?
Y:最近香港で撮られるMVは、ストーリー性のあるものが多いです。たぶんほとんどの人は台湾のMVの方がいいと思っているのではないでしょうか。MVがよくないのは、監督が悪いわけではありません。たくさんの外的要因があって、そうなってしまうのです。
M:香港に優れたところがあるでしょうか?
Y:香港は変なところだと思う。私も歌が好きだけど、見たことあるMVでは、資金は本当に少し。台湾のものはみなフィルムで撮っているし、長い時間をかけている。でも使い方(カラオケで誰かの伴奏のために流れる)は同じ。この状況は香港映画と同じようなもの。観客が何を望んでいるか知っていても、能力上それが出来るとは限らない。こんなときには、自分の出来ることを一生懸命やれば後悔することはない。
M:映画を撮る以外に、ちかごろ何韻詩(デニス・ホー)の新曲のMVを撮ったと聞いていますが、何故今回の仕事をうけたのですか?
Y:好きだから。今回の何韻詩との仕事は、卒業制作をした時に戻ったようでした。新人の芸能人とは面白いものが出来ます。もしただMVを撮るだけなら、私はやらなかったと思います。面白い要素がいっぱいあって、さらに今回は《蝴蝶》のスタッフを起用したので、制作の過程はとても楽しく、私の欲望を満たしてくれるものでした。

麥婉欣(ヤンヤン・マック)
98年香港演芸学院卒業。93年から映画、テレビ、CMの制作、記録係、助監督、美術・衣装などを担当。98年卒業制作で作った短編《了了》が香港独立短編及映像コンテストで受賞し、この作品が各国の学生映画祭で上映される。またこの年、「華蓮戦隊」を設立し、香港のインディペンデント映画、マルチメディアによる創作を応援。01年から香港電台の単発ドラマ制作にかかわる。

by「milk」207号

麥婉欣の《蝴蝶》が《Butterfly 蝴蝶 羽化する官能》と題してレズゲイで上映されるのをid:fai2:20050702で知った。ちょうど今週号の「milk」に麥婉欣のインタビューがあったので拾ってみた。これは「解構音楽録像潮流」(音楽と映像の新しい流れの構造を解説)という特集の一部。