시간(時間)(絶対の愛)

《Time(時間)》ソン・ヒョナ、パク・チヨン、ハ・ジョンウ 
金基徳(キム・ギドク):監督


セヒは彼氏のチウ(ハ・ジョンウ)が最近、自分のことに飽きているのでは思っている。喫茶店で待ち合わせれば、喫茶店のウエイトレスに見とれ、車を接触させた女性に名刺をわたしていたりと、気に触ることばかりで、ついに大声で争ってしまう。チウはそんな彼女を疎ましくも思っている。セヒは新しい自分に生まれ変わろうと整形手術する。6か月後、新しい顔でチウの前のあらわれるセヒは、巧妙にチウを誘惑していく。しかしチウがいまでもいなくなったセヒを愛している事を知り・・・。


いきなり整形手術の映像が出てきて、びっくりしたが、話はとても面白かった。しかしアイロニーいっぱい。顔を変えて彼氏に会うと、彼氏はいなくなった彼女を忘れられないでいる。そんな彼氏を見ているうちに、アイデンティティが揺らぎ、取り返しのつかない事実に直面、後悔などの感情が彼女の中に渦巻き、だんたんと精神が不安定になっていく。途中、笑える場面もあるが、最後はだめ押しにブラック。皆が顔を変えたら、どうやって元の相手を見分ければいいのか??


(以下ねたばれを含む)
違う自分になってみたいという欲望は誰にでもあるだろう。自分を知らない人々の中で、新たな自分を作り上げてみたい、そんな欲望にかられることもないとはいえない。では見知っている人の中で自分の存在価値(位置)を変えるには、どうすればいいのか? 数年失踪するのか、まったく知らない土地に行って生活するのか、顔を変えて別人となって接触するのか。
しかし別人の顔となって接触された方はたまらない。相手は自分のことを知っているが、自分は相手の顔がわからないのだ。知らない人のふりをして観察されているかもしれないし、自分に接触してきた人の、いったい誰が元の彼女なのかわからない。そうまでする彼女の執着心に恐怖を感じるだろう。混乱した彼氏は自分も整形して別の顔になろうとする。すると今度は彼女がまた別の顔に・・・。そうなると怖すぎて笑う展開だ。


顔はたしかに外見(見かけ)だけでしかないが、その顔が個人の性格をも代表しているように思われているし、見かけのよさは、女性にとっては重要だったりする。劇中、彼女のいない男性3人が合コンのようなものをするのだが、やはりかわいらしい女性が一番人気、ごくごく普通よりちょっと落ちるぐらいの彼女とカップルになってしまったチウはがっかりする。彼女は、チウの思いに気がつき、一緒にピストルを撃ちに行こうと誘う(実弾が撃てる場所が韓国にはあるらしい)。すると彼女の腕はすばらしく、チウは驚き、「ピストルを打ってるときの君はかっこよかった」という。彼女は「射撃はストレス解消にぴったり」と話す。たぶん彼女はいやなことがあるとやってきて、ピストルを撃っているうちに、すっかりうまくなってしまったのではと思わせる。
たしかに見かけは大事。もっとも大切なのはもちろん中身なのだが、中身を代表するのが見かけであるのは、見かけが人間の欲望を刺激するからだ。人間の顔に限ったことではない、あらゆる商品はパッケージ(外見)が何よりも大切なのを見ても分かる。外見が欲望を刺激して、購買意欲を起こさせる。みかけばかりにこだわっている人間は、自分を商品だと思っているということだ。そこまでいかずとも、人間にとっても、いまや中身を代表するのは、やっぱり見かけということで、誰もが見かけ適度にこだわる。だから見かけに惑わされず、本質を見抜く目も持ち合わせないとならない。そんなことをつらつらと考えさせる映画だった。 
香港で公開の予定あり、中文字幕が付いていたので、とても分かりやすかった。
2006.9.23@百老匯電影中心「香港亞洲電影節」


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