愛的世界

《愛的世界》
劉松仁、黄坤玄、鄭柏林、呉孟達、劉兆銘 
杜琪峰(ジョニー・トー):監督 1990年 邵氏 DVD


飛行機が空港に着くところから話は始まる。次のシーンでは、骨つぼを抱えた父(劉松仁)が2人の子供(黄坤玄、鄭柏林)とタクシーに乗っており、母親が亡くなったと分る。
そして次に父は、それなりの会社のそれなりの地位にいるが、どうやら借金まみれだと分る。そこへ呉孟達がやってきて、競馬で一山あてようとそそのかす。ここから主人公はどんどん転げるように谷底へ落ちてゆく。借金地獄とこれでもかの不幸ぶり。大きな家から粗末な小屋へ、借金還せと家の周りにペンキで描かれたり、返済期日に遅れ殴られ、(なぜか)髪を変な風に刈られたり。いや、それは見ていて笑いが出るほどのころげ落ちよう。幼い兄弟の健気ぶりやら、親子の誤解やら、そりゃもうお涙頂戴。ラスト近く、一瞬これで彼らに幸せがやってくるかと思うのだが、さらなる不幸が襲いかかり、一気にクライマックスへ。今見れば、ひょっとしてこれはブラックコメディかと思うほどの定石な転げ落ちようで、にこやかなパッケージとは大違い。当時、いったいどう受けとめられたのか非常に知りたい。


ちなみに子役の黄坤玄は《阿郎的故事》の子役。そういえば《阿郎的故事》だって、かなりな泣かせる話しだったのだが。
面白いのは、すでに、ここでも女性不在。母親は死んでいて、ビデオの中にしか登場しないし、叔母という存在もたいして重要でもなく、主人公を助けようとする女性もいるのだが、それも申し訳程度に最後の方に出てくるだけ。あくまでも父と息子の物語りだった。


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