天行者

《天行者》
鄭伊健(イーキン・チェン)、馮徳倫スティーヴン・フォン)、方中信(アレックス・フォン)、張智霖(チョン・チーラム)、葛民輝(エリック・コット)、黎耀祥(ライ・イウチョン)、周麗淇(ニキ・チョウ)、狄龍(ティ・ロン)、胡静(フー・ジン)、呉嘉龍(カール・ン)、霍思燕(フォック・シーイン)、黄又南(ウォン・ヤウナム)、彭敬慈(サミュエル・パン)、方平(ヘンリー・フォン/フォン・ペン)、呉廷燁(ン・ティンイップ) 
阮世生(ジェームス・ユエン):監督


かつて江湖で名を上げた葉秋(鄭伊健)は、タイで8年の刑期を終えた。刑務所生活で心を入れ替えた葉秋は、出所した暁には、まっとうな人生を送ろう考えていた。タイである女性(胡静)を尋ね金を借りた葉秋は、香港へ戻りらつ腕弁護士(張智霖)、雑誌編集長(葛民輝)、投資会社(か銀行)の元幹部らと幼馴染みを引き入れ会社を設立、慈善事業を行ない、会社を上場しようとする。アメリカから香港に戻ったばかりのO記(まる暴)担当刑事・宋國明(方中信)は出獄した葉秋を執拗に追い掛け、しっぽを掴もうとしている。江湖では、出獄した葉秋が戻ってくるのではと恐れた新進のヤクザ・鬼仔(馮徳倫)が、葉秋を陥れ、この機に一気にのし上がろうと考えていた。葉秋は、本当に心を入れ替えているのか? 警察やヤクザたちから自由の身になれるのか?


タイでの刑期を終え出獄といえば、いやでも同じ鄭伊健主演の《九龍冰室》と比べてしまう。
《九龍冰室》では、出所した男は片足が不自由になっていて、彼を待っていたのは街の茶餐廳。ヤクザが組みに戻れと迫ってくるが、かたくなに拒んでいく。最後は誰だか分らない若いヤツに刺されてしまう。
《天行者》では、男は出所するとある女性(胡静)を尋ね、大金を借りる。そしていきなり慈善事業を始める。米を配ってみたり、子供をディズニーランドに招待したりする。ごく普通にまっとうに生きて行こうというのは分るのだが、なぜ、わざわざ目立つ事をするのかが、まったくもって映画からは理解できない。ここで躓く。見ている間じゅう、ずっとこの事が気になる。さらに葉秋とかつての親分(狄龍)と鬼仔の関係がいまひとつはっきりしていないのも、気になるところ。
1つ1つの場面はどれもよく出来ているし、見ごたえもある。どの場面も手は抜いていないし、それなりのお金もかかっているだろう。しかし基盤になる鄭伊健の心理にリアリティが感じられない。絵空ごとでもかまわないのだが、それを観客に信じさせてくれなければ、映画が成立しない。私の見方が悪いのか? 
方さんは、役には合っているので、文句なし。馮徳倫は、彼でなくてもいいのでは(とは言っても他に誰とは浮かばないが)。とにかく、もう1回見ようと思う。2006.11.18@旺角百老匯


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