満城盡帶黄金甲(王妃の紋章)

《満城盡帶黄金甲》
周潤發(チョウ・ユンファ)、鞏俐(コン・リー)、劉燁(リュウ・イエ)、周杰倫ジェイ・チョウ)、陳謹、倪大紅、李曼、秦俊杰 
張藝謀(チャン・イーモウ):監督


ストーリーは省略。先日見た同じく曹禺の「雷雨」を原作とした呉回監督版《雷雨》との違いなどをまぜながら少し。ねたばれを含む可能性あり。


物語の舞台は、《雷雨》は封建的家庭、《黄金甲》は宮廷。登場人物は、王に周潤發、王妃に鞏俐。息子は《雷雨》では前妻の子と後添えの子の2人であったのが、《黄金甲》では前妻(陳謹)の子(劉燁)と後添え(鞏俐)の子が2人(周杰倫と秦俊杰)おり、合計3人の息子がいる。
前妻は、《雷雨》では周家のお手伝いで、現在はやはり周家に使えるものの妻、当主との間のもう1人の男子と新しい夫との間の女子がいる。ただし夫婦は分かれて住んでおり、夫や娘が周家で働いていることを妻は知らない。《黄金甲》では、以前の身分は分らないが、宮廷で働いていたもので、現在は宮廷医(倪大紅)の妻。子供は娘(李曼)のみ。さらに王妃が密偵を頼む女侠でもある。
《雷雨》では、封建的家庭の悲劇だったものが、《黄金甲》では宮廷内で王妃と王の思惑が引き起こす事件。
改編の仕方は上手く、なるほどと感心する部分もあり、ストーリーは大きな問題ないと思う。ただもう少し内面の掘り下げが欲しい。周潤發は渋く、鞏俐は貫禄で、劉[火華]はまたも不幸で、みな上手い。しかしだ、周杰倫はやはり他の人にしてほしかった。まず台詞がなってない。それに髭付きの汚い顔のアップは勘弁して欲しい。旺角では劉[火華]の演技に客が大笑いしている(笑う場面ではもちろんない)。


さらに決定的にダメなのは「色」。下品極まりない。《英雄(HERO)》は可笑しい映画だったが、色は確かに綺麗だったし、そこが見所でもあった。しかし今回は宮廷内がただキンキラしていたり、怪しい虹色だったり、まるで安いキャバレーの内装のよう。衣装もたしかに人手や時間はかかっているのだろうが、キンキラしていることだけしか分らない。重厚な衣装があまりにも安っぽく見えるのはどうしたことか。これは衣装だけの問題ではなく、照明やプリントの時の指示の問題もあるのか(つまりは張藝謀の頭の中の映像がおかしいってことだけど)。
さらに酷いのは、とにかく人が多いことと大量の胸(まるで18世紀ヨーロッパのようなこんな衣装がこの時代にあったのか?)。大量の人が同じ動作をくり返すにいたっては、まるでどこかの国のマスゲームを見せられているような気分。相変わらず大量の槍も降るし、大量の菊の花もちっとも美しくなく、ここでも趣味が悪いったらない。
衣装が幾ら重かろうが、映画にこれっぽちも重さがないのはどうしたことか。明らかに何かベクトルが間違っているとしか思えない。ホントに見終わって気分が悪くなり、思わず《傷城》(3回目)を見直しに行ってしまったほどだ。2006.12.23@旺角百老匯


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