馬楚成(ジングル・マー)

1月18日から公開になる《生日快樂》の監督、馬楚成へのインタビュー。すこしだけねたばれあり。まっさらな気持ちで見たい人は注意のこと。

・《星願》後遺症
milk(以下M):《星願(星願〜あなたにもういちど〜)》を撮ってからずいぶん時間がたって、なぜ今、また文芸愛情映画を撮ろうと思ったのですか?
馬楚成(以下J):実は文芸映画を撮りたいとは思っていたのですが、《星願》がヒットしてプレッシャーを感じるようになりました。《星願》を超える作品は難しいと思えたのです。それで、アクションよりの《東京攻略》やコメディの《夏日麼麼茶》をまず撮ることにしたのです。今回のストーリーは劉若英(レネ・リュウ)が書いたエッセイが元になっています。私も張嘉艾(シルビア・チャン)もよく書けた物語だと思いました。それで張嘉艾が自ら改編して脚本を書き、曾志偉(エリック・ツァン)にプロデュースを頼んだので、こういうスタッフになったわけです。文芸愛情映画としては珍しい組み合わせと言えるでしょう。
M:《星願》と《生日快樂》はどうしても比較されてしまうと思うのです。前者は、観客は見ながらハンカチを取り出さずにいられない作品でしたが、今回はどのようなものになるのでしょうか?
J:《生日快樂》は琴線に触れるというスタイルの映画です。ただ、《星願》のように扇情的ではありません。観客は知らず知らずのうちに涙を流してしまうでしょう。これは私にとっても新しい試みでした。以前、扇情的な作品を撮ったので、「今回は泣けるだろうか?」と考えていました。でもこの作品は、自然な流れになっています。それにこの映画はあまり商業的ではありません。よい作品は、観客が見て分からないはずはないと思っていますし、さらに1度見て、また見ようという気持ちにさせるものだとも思っています。
・古天樂に賞を
M:この映画の主題は愛情ですが、愛情のどんな部分を表現しようとしたのですか?
J:縁です。劇中、小米(劉若英)は小南(古天樂)が好きなのですが、小南は安心感の得られない相手だと小米は思っていて、彼とは一生友人でいられればと考えています。ところが小米は、いつもこの関係を打破したいという衝動にもかられています。2人は10年間の回り道をして、やはり最後には一緒になれないわけです。片方が一歩踏み出そうとする時、片方には別の誰かがそばにいて、諦めざるを得なくなる。結婚する相手は必ずしも最愛の人ではない、ということも多いと思います。従って観客はこの映画を見て比較的容易に共感できると思うのです。
M:張栢芝セシリア・チョン)は《星願》で金像奨最佳新人奨を受賞しましたが、この《生日快樂》の出演者では受賞が出来るでしょうか?
J:古天樂(ルイス・クー)が取れるといいと思っています。ノミネートでもいいですが。この映画の中での彼は笑わせるところもなく、二枚目に扮しているのでもなく、黒社会の雰囲気もありません。劇中の彼は、古天樂ではなく、完全に脚本の中に入り込んでいて、小南そのものです。この映画は古天樂の俳優生活においても、エポッックメイキングな作品で、観客に彼の演技力を見てもらう映画だと私は考えています。by 2007.1.4「milk」28号(意訳あり)

《生日快樂》は、クリスマス映画と旧正月映画の狭間、1月18日から公開。脚本は、インタビュー中に登場する張嘉艾と、舞台製作や書籍『香港風格』の胡恩威、脚本家の[登β]潔明の3人が担当。出演者は、古天樂、劉若英、曾志偉の娘・曾寶儀(ボーイ・ツァン)、周俊偉(ローレンス・チョウ)。公式サイトは→ ココ