《色・戒》金像奨も資格なし

オスカー外国語映画賞候補になれなかった《色・戒(ラスト、コーション)》、今度は香港電影金像奨からも外されることになるようだ。
金像奨の選考基準に合わないというので、金像奨基準を見てみよう(昨年の刊行物を参照に年度のみ今年に改めた)。

2007年の選考基準は、香港でロードショー公開された香港映画で、以下の条件を満たすもの。

  • 1)2007年1月1日から12月31日までに上映、
  • 2)公にチケットが販売され1週間のうち最低5回以上上映され、
  • 3)60分以上の長さがある、
  • 4)35ミリフィルムで上映された映画

これに注釈がついている。
註)香港映画とは以下の3つのうち2つ以上を満たす作品。
1、監督が、香港の永久居民の身分証を有する香港居住者
2、製作会社が、香港に正式に会社登記がある会社
3、16項目(製作、脚本、主演男優、主演女優、助演男優、助演女優、新人、撮影、アクション監督、美術、衣装、編集、オリジナル映画音楽、オリジナル映画主題歌、音響効果、視覚効果)のうちに、最低6人が香港人(香港永久居民)であること。


この3が改訂され19項目(18項目とも)のうち8人になったと書いている新聞があるが、項目自体が昨年は16+1(監督賞)しかないのだが、来年度項目が増えるということか、それともオリジナル主題歌賞のうち作詞、作曲、歌をそれぞれ1人と数えるのかなどは不明。

《色・戒》は以上に当てはまらないということだ。何事にも基準は必要だから仕方が無い。基準が現状にそぐわなくなったら、改訂していけばいい。ただ私は《色・戒》は香港映画でも台湾映画でも中国大陸の映画でもないと思っている。《色・戒》は、そういった中国語圏内の地域カテゴリーの外にある映画だと思う。金像奨にノミネートされないからといって、映画の価値になんら変わりはないわけだし、受賞がすべてではない。


これが上にあげた雑誌「香港電影」の「何を持って香港映画というのか」ということに関連していて面白い。
金像奨の規定なら、澤東が、王家衛監督で、西洋人を使って映画をとれば、それは香港映画になる。でも一般にそれを香港映画と呼ぶ人はいないだろう。ではこれが全編香港で撮られていたらどうだろう。少し香港映画的かもしない。脇役にでも香港人が出ていたら、広東語が聞こえたら、西洋人が茶餐廳のオヤジと注文で喧嘩していたら・・・。
または呉宇森監督がミラマックスで、ニューヨークを舞台に周潤發と張曼玉で英語のラブストーリーを撮ったら、これは香港映画だろうか。主人公がニューヨーク生まれの華僑ならば。主人公が香港からやって来る香港人という設定ならば。これがチャイナタウンを舞台に広東語で撮ったら・・・。
そうやって考えていくと、私たちが「香港映画」と思う条件がおぼろげながら見えて来るように思う。