杜琪峰と韋家輝

杜[王其]峰(左)と韋家輝(右)銀河映像を設立してから11年、杜琪峰(ジョニー・トー)と韋家輝(ワイ・ガーファイ)はパートーナーを組み、2人の作品には《孤男寡女(ニーディング・ユー)》《痩身男女(ダイエット・ラブ)》《我左眼見到鬼》《大隻佬(マッスルモンク)》などがある。しかし《大隻佬》のあと、2人はそれぞれ自分の道を歩み、10年の研鑽のあと再び一緒に映画《神探》を作り出した。これは大いに期待するところ。この機会に2人がそれぞれの道を歩んで来た理由を聞いてみた。


脚本に感服


杜琪峰は「今回は韋家輝がいたずら心を起こしたんだ。《神探》の脚本では明らかにキャラクターは数人なのに、それを数十人にしてしまっている。それは彼が心の中に潜む悪魔をリアルな人間として表現したからだ。たとえば林家棟の役から7つの悪魔を作り出した。登場したと思ったら8人になってしまう。見たら分かるが、撮るのが大変だよ。物語も一般の観客はついていけない。理解するのに時間がかかる」と笑う。《大隻佬》のあと袂を分ったが、それは意見が一致しないからということではないと言う。誰も白黒つけたがるが、「僕たちはいつも逢って酒を飲んで食事をして話しをしている。僕が脚本を書いたら彼に意見を求めているから、分かれたという感覚はまったくない。創作ということについていえば、テレビの時から彼には感服している。韋家輝の創作は1番だといっていい」。


低調な時は必ずある


それぞれの道を歩んでから、2人はどんどん遠く離れてしまったように見えた。杜琪峰はハリウッドやオスカー受賞に向かって歩きだしたが、韋家輝は旧正月映画の成績もごく普通だった。しかし友人である杜琪峰には別の見方があるようだ。「それほど面白くないし、それほど良くないもないと思うのかい。僕はそう思わないよ。旧正月映画は、にぎやかならそれでもう十分だ。そういうのは韋家輝を知っている人で、彼に対する要求が高すぎるんじゃないか。映画を撮り終わって上映されたら反応がいいかどうかはあまり気にならないと思っている。それは過程にしかずぎない。どの監督も経験することだ。僕も《開心鬼撞鬼》や《7年之癢 》を撮っていないことには出来ないんだ。だから出来がよくないからといって、いつまでもそこに留まっているということにはならないんだ。つまり僕は韋家輝が優れた監督だということを信じているんだ」。


化学変化を引き起こす


杜琪峰は、韋家輝の長所は物語の作り方が綿密で、人物の性格描写が緻密なところだと思っている。「よきパートーナーだから批判はしない。ただよい化学変化が生まれているはずだ。これまで試したことのないこと、試せなかったことを彼は試してみたんだ」。


「韋家輝はつねに変化を求めている」


韋家輝は、つねに脚本に力を注いできた。杜琪峰と分かれ独自の道を歩んだ理由について彼は「ある段階に留まってしまうことはクリエイターにとっては、悪夢と言えるだろう。当時は変化を求めていた時期で、4年後の今また杜琪峰と一緒に仕事をするのもひとつの変化だ。僕と杜琪峰が意見が合わないというのは、みなの考えすぎ。当時、会社にはいろいろな人がいた。例えば羅永昌(ロー・ウィンチョン)や游乃海(ヤウ・ナイホイ)を次を引き継ぐ人物と見なして、彼らにトライさせたのだ」。


自由を味わう


韋家輝が独自に歩んだ数年に監督した《最愛女人購物狂》《喜馬拉亞星》《鬼馬狂想曲(新世紀Mr.Boo! ホイさまカミさまホトケさま)》はどれも杜琪峰との合作時代のような輝きはなかったため、彼の能力は疑われ、杜琪峰がいないと成り立たないのかと思われた。韋家輝は「疑いなく杜琪峰は非常にすぐれた個性をもっ監督だ。商売ということについていえば、これらの映画は責任と任務は果たしたと思っている。興行成績は悪くなかったのだ」とはっきり話す。韋家輝は社長の向華強(チャールズ・ヒョン)が彼を信じて、自由に創作させてくれたことに感謝している。「自分の会社以外での仕事については、商業的ではないという理由から自由な発想を嫌う社長もいるが、このことに関して向華強は自由にさせてくれた」。


こだわりと譲歩


韋家輝の作品には禅の思想と教義に満ちあふれており、かならずしも誰もが理解できるものではない。新作《神探》もまた人の心の悪魔を描き、高尚すぎる心配はないのだろうか。彼は「子供のころから考えることが好きだった。大人になってからは宗教関係の本を読むのが好きだ。大なり小なりその思想や考え方が、自分の作品に反映していると思う。《神探》は商業映画なので、心の悪魔という題材を借用したにすぎない」と笑う。誰でも心に悪魔を持っている。意志が弱い時には悪魔にとらわれてしまうのだ。「2年ほど前に禁煙した。禁煙の過程は大変ではなかった。しかし難しかったのはその癖を直すこと。癖が心の悪魔だ。しかし映画の中の林家棟のように7つも悪魔がいるのはめったにないことだ」。
また杜琪峰について、韋家輝は2人の合作は無線電視時代に始まるという。「TVB時代《天堂血涙》というテレビ映画で合作したあと、彼は僕にテレビから出て映画会社をやらないかと言ってきた。杜琪峰は自分の映画会社をやりたがっていた。これが彼の心の悪魔といえるかもしれない。96年、銀河映像を作り今に至っている」。「僕らの合作には大きな衝突はない。こだわりと尊敬が必要なだけだ。2つの版が出来てしまった時には、僕の記憶では杜琪峰が僕に譲ってくれたことの方が多い」パートーナーへの評価としては、韋家輝は杜琪峰の映像は別格だと褒める。「杜琪峰はカメラの動かし方の工夫が素晴らしく、俳優たちを動かす能力に長けていて、それが強烈な杜琪峰スタイルを作り出すことになっている。さらに最もよいものでもOKを出さないこともある」。

by 2007.11.25「頻果日報」(抜粋)