金鎖記

《金鎖記》焦媛(ペリー・チウ)、尹子維(テレンス・イン) 
張愛玲(アイリーン・チャン):原作 
王安憶:脚本 許鞍華(アン・ホイ):演出


裕福な姜家の次男に嫁いだ七巧(焦媛)の30年。体の不自由な次男に嫁ぎ、2人の子をもうけるが、夫に死なれ寡婦のまま満たされない日々を送る七巧は、姜家の三男(尹子維)に密かに思いを寄せるが、この恋は実ることはない。ただただ自らの人生を恨みながらすごす七巧に心安らかな日は訪れない。


シンプルな舞台装置とライティング。初め舞台上に出演者が並んでいる中を、焦媛が真っ赤な花嫁衣装を着て尹子維におぶられて走り抜け、舞台中央奥に座る。そして暗転、机と椅子が出て来るが、焦媛は観客に背中を向けて座り、刺繍をしている。印象的なはじまり。
《金鎖記》はテレビドラマもあるようだが、見たことがないので、その他の映像と比べることはできないのだが、焦媛はさすが人気も実力もある舞台女優だというのがよく分かる。特に後半、歳をとってからがすばらしい。長年アヘンを吸って体を悪くしているだろう七巧の歩き方や立ち姿を初め、自分の人生を、そして他人を恨み発する言葉の数々。
尹子維は、もともと広東語に少し英語訛りがあるので、そこが気になるといえば気になる。姜家の三男は七巧にとってはとても魅力的な人物だが、大店の息子にありがちな浪費家でもある。そんな優男ぶりが尹子維の雰囲気に合っていた。しかし最後、歳をとってからも若い時と同じ演じ方だったのが少し残念。
一方で焦媛と尹子維の親密なシーンが話題になっていた。確かに情熱的なシーンがあったのだが、相変わらずこういうシーンで香港人がクスクスと笑う。何故笑う? そしてやっぱり携帯が鳴る。あいやー。
台詞には字幕があるわけではないし、難しい言葉も多かった。さらなる広東語の勉強が必要だ。でも久しぶりの舞台は面白かったので、次回は焦媛の《白毛女》が見たい。2009.4.5@上環文娯中心劇場

許鞍華(アン・ホイ)がなぜ民初が背景の舞台劇に尹子維を選んだのか不思議だ。プロデューサーの高志森(クリフトン・コー)が明かしたところによると、その日、許監督はまず彼に会ってみてからと考えていた。ところが席についた尹子維と許監督はキャラクターについて話し合いを始めてしまった。さらに彼はこの役について独自の意見も披瀝した。しっかり予習をしていた。それで許監督は彼を使わない理由を見つけられなくなったのだ。by 2009.4.6「文匯報」

私も何故、尹子維なのか謎に思っていた。最近、香港映画はいま1つだが、舞台に意外に面白そうなものがある(見てはいないが面白そうだと思う。でも舞台を見るにはさらに広東語の修行が必要)。尹子維、今後は舞台でいくのもいいかも。