The Limits of Control(我係殺手、年中無休)(リミッツ・オブ・コントロール)



《The Limits of Control》Isaach De Bankolé、Alex Descas、Jean-François Stévenin、Óscar Jaenada、Luis Tosar、Paz de la Huerta、Tilda Swinton、Youki Kudoh(工藤夕貴)、John Hurt、Gael García Bernal、Bill Murray 
Jim Jarmusch(ジム・ジャームッシュ):監督


男(イザック・ド・バンコレ)が、何か任務を帯びてスペインへやっていくる。マドリッドと思われる街のマンションにたどり着く。ボストンバッグを置き、ベッドに横になる。しばらくして男はむっくり起き上がり太極拳かと思うようなとゆっくりした動作をする。男はマンションを出て、街のカフェにやってくる。「エスプレッソを2つ、別々に」。ウエイターはダブルエスプレッソを持ってやってくる。男は言う「エスプレッソを2つ、別々に」。
男は「スペイン語は話せないよな?」と言って自分に近づいてくる者には、懐からマッチ箱を出してテーブルに置いてみせる。すると相手も同じ絵柄のマッチ箱を取り出す。相手がその場を去ると、男はマッチ箱を開けて中に入っている紙を取り出し眺めたあと、丸めて口の中に入れ、エスプレッソと一緒に飲み込む。
男はそうやって次々と指令と思われるものを受け取りながら、スペインを旅してどんどん田舎にやってくる。男はどんな任務を帯びているのか、どこへ向かっているのか、この旅に終わりはあるのか・・・。


「大好き。最高!!」台詞が少ない。それに話すのはもっぱら、男に近づいてくる者たち。映画の話や宇宙の話、ギターのことなど脈絡がない。男は部屋で太極拳のような動作をするのだが、最後には拝むような仕草をして「阿弥陀仏」と不鮮明ながら広東語と思われる言語で言っている。男は携帯電話が嫌い。仕事中はセックスはしないと言い切るから、裸の女性が誘惑しても何もしない。無口でストイックな男は、マッチ箱を受け取り指令らしきいものを貰って移動するごとに、都会からどんどん田舎へやってくる。もしかして男は騙されているのではないかと思ってしまう。
「街へやってきて、渡された鍵で部屋を開け、ボストンバッグを置き、ジャケットを脱ぎ、丁寧にボストンバッグの上にジャケットを置き、靴を穿いたまま、ベッドに横になり、起き上がって太極拳をして、外出て、エスプレッソを2つ頼む。すると誰かがやってきて・・・」この繰り返しのリズムがたまらない。その間に男は美術館に行き絵画を眺めたり、見知らぬバーでフラメンコに聞き入ったりするが、これが指令なのか、はたまた男の趣味なのか? 出て来る風景も、なんか少しいい具合に外していて、現実味が薄く幻想的にさえ見えてくる。カメラはクリストファー・ドイル


きっと杜琪峰もこういうことがしたいんだろうと思う(暴言か?)。
2009.8.16@夏日國際電影節(The Grand Cinema)


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