《情話紫釵》

《情話紫釵》企画・脚本・演出:毛俊輝(フレデリック・マオ)
共同脚本:荘文強(フェリックス・チョン)、麥兆輝(アラン・マック
音楽監督:高世章(レオン・コー)
粤曲監督:李章明
イメージ&コスチュームデザイン:葉錦添(ティム・イップ)
出演:謝君豪(ツェ・クワンホウ)、何超儀(ジョシー・ホー)、林錦堂(ラム・ガムトン)、呉美儀(エイミー・ウー)ほか。


粤劇「紫釵記」を見た帰りの若者たちが物語について語る会話をベースに、舞台の粤劇「紫釵記」と、今起こっている「現代版紫釵記」というべき物語が同時進行していく。
謝君豪はやはり舞台の人だった。何超儀だけが舞台の人ではなく、台詞回しが1人だけ違う。違和感ありかと思いきや、舞台の人たちの少しばかりオーバーな(特に謝君豪は役柄の上でも少し芝居がかっている度が強い)演技を中和しているようで、彼女の存在のおかげで芝居が現実感を持って立ち現れてくるようだった。今時のお芝居はマイクをつけているので、何超儀の少しハスキーな声もそのままなのもよかった。
脚本・演出の毛俊輝は、「自分は普段粤曲を聴いている。だったら舞台にしてみよう」という気持ちで創ったと話していた。粤劇と話劇を同じ舞台に上げてしまうのは、粤劇に詳しくない私は興味深い趣向だと思い、とても面白く見たのだが、粤劇に期待を込めてやってきた観客もいたようで、はたして粤劇ファンにはどうとらえられたのか気になるところ。
舞台装置はシンプルで品が良く、美しかった。舞台一番奥に粤劇のための背景(樹木)があり、その前に紗の幕がひかれていて、舞台上と現実の世界の結界としている。また舞台右側と奥から低い台が滑り出るようなっていたり、右側にバーカウンターが作られたりしていて、登場人物の動線も奥から手前に、右から左へと一定の動きをしており、舞台装置もやはり奥から手前に右から左へと、決まった登場の仕方が、ミニマリズムな空感を作り出していた。2010.3.5@香港演藝學院歌劇院