前度

《前度》。鍾欣桐(ジリアン・チョン)、陳偉霆(ウイリアム・チャン)、詩雅(ミッシェル・ワイ)、周俊偉(ローレンス・チョウ)、曾國祥(デレク・ツァン)、向佐 
麥曦茵(ヘイワード・マック):監督 


ストーリーは香港國際電影節上映時(id:hkcl:20100412)を参照。前回の感想に追加・・・。
現在と過去を行ったり来たりして物語は進んでいくが、切り替えは上手くいっており、映画の感情に観客の感情が寄り添ってスムーズに見ていける。鍾欣桐は登場から、かなりイヤな女性で、これを上手く演じていて(いやもしかしたら多少”素”なのかもしれないが)、おもいっきりがいい。
鍾欣桐に最初に女優を感じたのは彭浩翔(パン・ホーチョン)の《公主復仇記》だが、たぶん鍾欣桐にとっては、《前度》がエポックメイキングな作品になるのだろう。張栢芝セシリア・チョン)が映画に戻ってこない今、香港では貴重な、生身の女性を感じる数少ない女優だ。スキャンダルも肥やしにしてどんどん進化していって欲しい。


麥曦茵の映画でいいのは台詞と状況がいきいきしていること。多少の誇張はあるものの、すぐれた観察眼によって描き出される若者の生態は、観客には納得しやすく、感情移入もしやすい。また香港映画ではつきあっている男女が登場するのに、往々にしてセックスが満足に描かれていなかったり、描かれてもおざなりな表現だったりすることが多いが、麥曦茵はその部分も避けることはなく、できるかぎり描こうとしている点も評価に値する。これは普通のことなのだが、保守的な女優や男優が多い香港ではなかなか難しいからだ。


なお、前回のデジタルからフィルムにする際の失敗は回避されており、白っぽいところはあるものの、前回よりはるかによい仕上がりになっていた。
2010.6.10@UA朗豪坊


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