「歳月神偷・偷不走的集體回憶」

羅啓鋭、徐詠璇、張婉[女亭]出席:羅啓鋭(アレックス・ロー)、張婉婷(メイベル・チャン) 
司会:徐詠璇 
於:2010.7.24「書展」@會展
思い出すままに。

  • 短編小説の方が長編小説より監督としては力を発揮できる機会が多い。
  • 張愛玲や金庸など、映画にするのは怖い。
  • もし10年前に《歳月神偷》を撮っていたら:今より道具などは揃えやすかったと思うが、監督としてはこのように客観的には撮れなかったかもしれない。創作にはある経験と衝動が必要だが、客観的で冷静な態度も必要だ。
  • 映画に感情は必要だが、感情過多は駄目だ。コントロールが必要。
  • 《歳月神偷》では音楽もいかにもなものは使わなかった。
  • 張婉[女亭]は長いもの語りが好き。ロシア文学が好きでドストエフスキーが好き。南米の作家も好きでガルシア=マルケスの『百年の孤独』も好き。
  • 羅啓鋭はいろいろな国の小説を読む。日本の小説の細かい表現は面白い。
  • 秋天的童話(誰かがあなたを愛してる)》ではCGが無かったので、何日も夕方5時半になるとユンファを走らせた。当時は俳優とどうやってコミュニケーションしていいのか分からなかった。頭で考えたことをカメラマンや俳優にどう伝えたらいいのか分からなかった。
  • 羅啓鋭は普段は細かく描写を書く方だが、ユンファを走らせたシーンには「天涯海角没有戀愛的男人失戀了」としか書いていなかった。
  • 秋天的童話》のキャスト時、ユンファンは”票房毒藥”(ヒットしない)だったため、他の人をと言われたが、この役が出来るのはユンファだけだと思った。
  • 鍾楚紅の役には候補が2人いた。キャスティング担当はもう1人を選び、僕らは鍾楚紅を選んだ。なので、鍾楚紅は自分たちで話をするように言われた。
  • 《歳月神偷》のキャストについて:兄役は羅啓鋭の級友の息子。《歳月神偷》のキャスティングをしているある日、級友にばったり会い家に遊びに行った。リビングを横切った男子がおり、あれは誰と訪ねると息子だという。探していた兄役にぴったりだった。
  • 弟役は探すのが大変だった。数十人面接をした。DBS(=監督の出た学校)にも探しにいったが、ちょうどいい子がいなかった。お行儀が良すぎたり、恥ずかしがりだったり、年齢が合わなかったり。今の弟役の彼は沙頭角の小学校に行っており、まわりはみな大陸からやってきている子で学校で只一人の香港人だった。最初「監督のお兄さんこんにちは。監督のお姉さんこんにちは」といい、おとなしい子だったので、この役には相応しくないと思っていた。カメラテストをした時、屋上で許鞍華(アン・ホイ)の先生に成績が「差差差」と言われる場面でカメラテストをしたら、「差差差」と言われたあとに自分でチャチャチャと踊った。それを見て、なんだこの子は実はそんなにお行儀がいいわけではなかったんだということで採用になった。
  • 兄も弟も新人を使うつもりでいた。
  • 《玻璃之城(ガラスの城)》は、香港大學の楽しい思い出をスクリーンに残して置きたかった。自分が(学生時代を過ごした、香港大學の)何東宿舎(女子寮)が取り壊されると知り、撮っておかなくてはと思った。当時資金がなくセットは作れなかったが、取り壊し前の女子寮を撮影に使わせてくれた。当時はまだ「集體回憶」という言葉は使っていなかったが、思い出をとどめておきたかった。
  • 1997年はいろいろなものが無くなった。まるでガラス(玻璃)に映った街(城)のように消えてなくなるのではと思った。
  • 舒琪(シュウ・ケイ/スー・チー)は当時《色情男女(夢翔る人 色情男女)》を撮っていて、大学生の役は相応しくないと思われていた。本人もプレッシャーが大きかった。できあがった映画を見た大学教授が舒琪の役を純真ですばらしいと褒めた。これを聞いた舒琪はとても歓んだ。
  • 黎明(レオン・ライ)も香港大の学生たちは学生に見えないと話していた。
  • いつも「Cast against type」。いつも同じでは退屈。コメディの呉君如(サンドラ・ン)に母親役、黒社会の任達華(サイモン・ヤム)に父役。
  • 羅:小説を書くのも映画を撮るのも好きだが、今は撮りたい気持ちが大きい。
  • 張:長い小説が好き。『紅楼夢』や『ハリーポッター』など。自分が小説の中で生きている感じがする。夢を見ているのが好き。映画では、夢見るものを実現させている。たとえば、《玻璃之城》で舒琪が小型飛行機を操縦するのは自分がしてみたいから。

他に《宋家王朝(宋家の三姉妹)》について少しあって、ほぼ以上のような内容。聴講者から、今後の香港映画について質問された羅啓鋭の回答は、
「香港映画と中国映画をことさら区別するのは可笑しい。たとえば、アメリカ映画にはニューヨーク映画と西海岸の映画がある。ニューヨークの映画はどちらかというと社会派で人物を描いたものが多く、西海岸の映画は空からUFOが降りてきたりするような作品。どちらもアメリカ映画だ。そして違う国の人が見ても内容は理解できる。香港映画と中国映画も同じような関係になって、香港映画の特色を持ったまま、他の中国の地域の人も理解出来る映画をつくっていきたい」。
また現在、北京で1、2館、芸術映画を上映するような映画館で、広東語の映画を広東語のまま上映しているそうだ。(ただし通常の配給では北京語で上映)