為你鍾情

李治廷(アーリフ・リー)、文詠珊 (ジャニス・マン)、衛蘭 (ジャニス・ビダル)、狄龍(ティ・ロン)、張堅庭(アルフレッド・チョン)、劉浩龍(ウイルフレッド・ラウ)、邵音音(スーザン・ショウ/シュウ・ヤムヤム)、單立文(シン・ラップマン)、鄒凱光(マット・チョウ)、黎明(レオン・ライ)、岑珈[王其]、陳耀榮 郭子健(デレク・クォック):監督


穎(衛蘭)は幼い時に母を亡くし科学者の父と祖父とアメリカで暮らしていた。子供のころ母の事を訪ねると父はいつも物語を語ってくれた。中に一つだけ大好きな物語があった。
2010年、大人になった穎は父、祖父と香港へもどってきた。父と祖父はこれまで誰もがなしえなかったある新しい発見を発表するためにやってきた。その最中、父は倒れて、返らぬ人となってしまった。父は穎に宛て手紙を残していた。そこには穎の母と本当の父のことが書かれていた。そして1つの鍵が残されていた・・・。


前作が功夫映画への愛なら、今度は張國榮レスリー・チャン)と80年代末への思いの丈を詰め込んだ1作。ファッションやヘア、部屋に溢れる小物の数々まで、けして気を抜かず、80年代末への愛に溢れている。
やり遂げられなかった事、実行出来なかった約束、苦い恋の思い出、それら青春のすべてへのやるせない思い。さらには現実を受け止めるつらさ、前をしっかり見る勇気みせてくれる(話が抽象的になってしまうのは、ねたばれをさけるため)。セットも小道具も色使いも懐かしくて素敵。そしてあり得ないことをリアルに思わせる独自の世界感をしっかりもっている。


李治廷は《歳月神偸》に続いて2作目。よい子の印象が強いせいか、本来ならこの役はもう少し軟派でもいいと思うが、前作を引きずっていい子に仕上がっている。文詠珊は映画は5作目。勝ち気な役も内向的な役も演じており、今回は勝ち気な役。これまでの作品ではどれも印象的な役で登場しており、雰囲気のある女優(本来はモデル)で、得難い存在だと思う。今回もかなり勝ち気で一途な役をめいっぱい演じている。衛蘭は映画初出演だと思う。眼鏡少女で登場だが、これがなかなか可愛くてよい。このところあちこちの映画で顔を出す劉浩龍はレスリーという名の探偵で口からうまれたような男を難なく演じている(軟派そうな顔なので意外にこういう役がよく似合う)。その他、郭子健映画おなじみの邵音音と單立文。麥曦茵(ヘイワード・マック)《烈日當空》から2人ほどがちょっと顔を出している。
忘れてならないのが客演といいつつ、美味しいところを全部もっていった黎明。《火龍》につづいてむさい、汚い状態をさらしつつ、さらには捨て身(自嘲ともいう)としか思えない衣装とダンスの披露もあり。ある意味お笑い部門も担当してしまった感もあり。この映画、話の構造は《打擂台》とよくにており、黎明は《打擂台》でいえば、陳観泰や梁小龍のように自らの尊厳を取り戻していく人物で重要な役どころだ。
そして影の主役は張國榮(の曲)。レスリーファンはこの映画をどう見るのか是非知りたい。
2010.9.2@UA朗豪坊


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