烈火青春(レスリー・チャン 嵐の青春)

《烈火青春》張國榮レスリー・チャン)、夏文汐(パット・ハー)、葉童(セシリア・イップ/イップ・トン)、湯鎮業(ケン・トン) 
譚家明(パトリック・タム):監督 1982年


主な登場人物はルイ(張國榮)、キャシー(夏文汐)、邦(湯鎮業)、トマト(葉童)と元日本赤軍の青年・信介の5人。
初めて見たのはいつだったのか忘れてしまったが、日本赤軍切腹というちぐはぐな最後だけがやたら印象に残っていた。改めて観るといろいろな発見があった。さらに今回は鑑賞後に、「溜走的激情−80年代香港電影」の著者・家明さんの解説付きで、最後の砂浜の戦いの訳なども含め、当時の状況がより理解できた。少し紹介しておこう。

  • この映画の脚本家に6人の名前が挙がっているのは、製作の途中でいろいろな人が参加したということ。当初、監督の譚家明は2つの要求を脚本の陳冠中にした。「青、赤、白の色を使って欲しい。ノマド遊牧民)を描いて欲しい」。たったこれだけだったが、その時すでに色について言及していたのはジャン=リュック・ゴダールの影響である。(色に注目して見て欲しい)
  • 監督自身はあるインタビューで「DVD版はある場面の順番が入れ替わっている」と話しているのだが、これは監督の思い違いであった。実際は公開バージョンもDVDバージョンも同じである。ただし公開バージョンは、当初、監督が考えていたコンセプトとは異なっている。映画は1981年夏から撮影を開始、1981年秋までに撮り終えたが、できあがった作品は制作者の満足を得られず追加撮影を求められ、最後の砂浜の決闘を1982年に撮影している(多少、娯楽映画的要素を投入したということ)。この時、黄仲標はすでに徐克(ツイ・ハーク)の《新蜀山剣侠》を撮影していたため、他の人が撮っている。
  • 公開当初、この映画はそれほど評価されていなかったが、公開の翌年になり少しづつ評価されるようになっていく。
  • 構図は監督の譚家明とカメラマン黄仲標のディスカッションでできている。カメラフレームが斬新。たとえば、フレームの右端に右を向いた人物を配置する(普通は右を向いている人はフレームの左側に配置して顔の前の空間を広くとる)。(今回言及されなかったが、譚家明は人物や者をスクリーン中央に置いて左右対称の画面を作るのも好き、この映画でも頻繁に登場する)
  • トラム内で撮影した夏文汐と湯鎮業のシーン(この場面も見所のひとつ)では、当時ステディカムがなかったため、ハンディカムに何か腕のようなものを自作してつけ撮影した(実際にはどんなものなのか本人に聞いてみないと分からない)。トラムが印象的に登場する映画のひとつ。
  • 日本赤軍、ルイの部屋でついているテレビに映る原宿の竹の子族、歌舞伎(劇中ではそう呼ばれている)、シンナーを吸引していた名古屋の少年がやけどを負った話などから、譚家明が日本的なものへ大いに興味を持っていたことも分かる。・・・・

《愛殺》(id:hkcl:20070402)とこの《烈火青春》は、どこかフランス映画を思わせる内容で、構図、色使いとも見るべきものが多い。最後の砂浜の決闘はなかったことにして見るといい映画だ。
2010.9.3@香港電影資料館「捕光捉影・向兩位攝影大師致敬」


■□10年に見た映画一覧□■


そういえば、張國榮の映画を上映するとかならず張國榮ファンとおぼわしき方々を多く見かけるのだが、今回は目立たなかった。ファンの間でこの映画の評価は低いのだろうか?