東風破

《東風破》苗可秀(ノラ・ミャオ)、泰迪羅賓(テディ・ロビン)、官恩娜(エラ・クン)、 周俊偉(ローレンス・チョウ)、呂聿來、何韻詩(デニス・ホー)、邵音音(スーザン・ショウ)、張同祖、劉浩龍(ウィルフレッド・ラウ) 
麥婉欣(ヤンヤン・マック)、鄭思傑(クレメント・チェン):監督


薬物乱用さらには重い病と診断された亞男(官恩娜)は、サンフランシスコから香港へとやってきた。通りかかった東華義荘に興味を持ち、義荘の山伯(泰迪羅賓)の元ではたらくことになった。亞男はネットで知り合った阿麟(周俊偉)を訪ねるが、阿麟はそっけない。
同じ頃、サンフランシスコから数十年ぶりに実家の薬材舗へもどった二花(苗可秀)は、店を売るという甥の阿麟に反対するためにもどってきたのだった。阿麟は薬材舗を売って得た金を亡くなった友人の妻・阿欣(何韻詩)と息子の為に使おうと考えていた・・・。


香港で最も古い慈善団体である東華三院が140週年を記念して製作した作品。上映後のQ&Aによると、東華三院からは特に主題についての制約などなく、また東華三院に関わりのある物語である必要もなかったが、話を聞くと大変興味深い内容であったため、義荘の話などを取り入れ4日間で脚本を書き上げたとのこと。
東華三院設立当初は、在香港の華人への中医による医療を主としていた(その後中医と西医治療どちらもおこなっている)。さらに、教育、大陸の災害へのチャリティー、歴史的な文物の保存なども行っている。そしてもう1つの東華三院の大きな事業は、海外へ出て彼の地で身よりもなく亡くなった人々の遺骨や遺体(棺桶)を出身地である中国大陸へ返す作業である。その一時保管場所がこの映画の舞台ともなっている義荘である。


初見(頭の30分は見逃したが)で感心したのは、中医、義荘、文物保存という東華三院の物語を非常に上手く映画に取り込んでいたこと(上記のようにそれは特に要求されたものではなかったのだが)。実は映画を見る以前に、現在香港歴史博物館で開催されている東華三院に関する展示「香江有情:東華三院與華人社會 」を見ていたため、ここに登場する物語が東華三院に関わりのある事柄であることにはすぐに気づいた。しかしそんな物語を知らなくても映画は映画として成立していた。牽強付会なところもなく、比較的自然に物語りに溶け込ませ、さらに新たな物語とメッセージを創り出していたことは驚きでもあった。


2010.11.8@The ONE百老匯(香港亞洲電影節)


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