海豚灣(ザ・コーブ)

《海豚灣》リック・オリバー リイ・シホヨス:監督


和歌山県太地のイルカ追い込み漁を批判するドキュメンタリー。詳しくは公式サイトを。
「あの入り江には恐ろしい事がある。人が見てはいけないことが行われている」というホラー映画として楽しく見た。


ドキュメンタリーほど作り手の意見がはっきりしている映画はない。この映画は太地のイルカ追い込み漁を最初から悪と規定し、いかに太地の人々がそのことを隠そうとし(隠す=悪事)、映画の作り手たちはいかなる手段を駆使してその禁じられた行為を撮影したのか、ということがいいたいのだろう。というのも、本題であるイルカ追い込み漁より、撮影者たちが真剣な顔で岩もどきの隠しカメラをつくったり(可笑しくて吹き出してしまった)、カメラマンはいかに優秀な人材かや、ダイバーはどれほど優れているのか、機材はどれほど立派なのか、大がかりなのかなどの描写が妙に細かかったからだ。ようは川口浩探検隊か。
そして映画の作りが巧妙なため、ついつい制作者の思惑どおりに太地のイルカ追い込み漁は悪いことだと思えてしまうから恐ろしい。


鯨やイルカは高度な知能を持っているから殺してはいけないとう論理にはまったく同意できない。どんな動物でも植物でも正当な理由なくして殺しも食してもいけないだろう。もっといえば、実は私は動物園や水族館も好ましいとは思っていない。
太地のイルカ漁については、ネットで少し情報を見ただけなので、好いのか悪いのかのつぶさには判断はできない。各地のイルカショーに提供するためにイルカを捕獲するというのはたぶん正当な理由といえるだろう。しかし今や水銀の含有量が多くイルカが食用としては適さないのなら、捕獲に至らなかった多くのイルカを殺害する必要はないようには思うのだが・・・。
2010.11.17@The ONE


日本では上映反対が起こったようだが、反対などするから映画が真実を伝えているように思われてしまう。上映して検証し、ねつ造があるなら黙っていないで、ねつ造をあばいていけばいい。太地の人々がイルカ追い込み漁を誇りに思っているなら、もっと堂々としていればいいのだ。


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