役所広司、山田孝之、松方弘樹、沢村一樹、伊原剛志、古田新太、伊勢谷友介、稲垣吾郎、市村正親、内野聖陽、光石研、平幹二朗、松本幸四郎、岸辺一徳、吹石一恵、高岡蒼甫 三池崇史:監督
将軍の腹違いの弟で明石藩主の松平斉韶(稲垣吾郎)は、悪行の限りをつくす暴君。明石藩家老の間宮が切腹して訴えるが幕府はおとがめなし。老中の土井大炊頭利位(平幹二郎)は、斉韶が幕府の要職に付く前に暗殺してしまおうと考え、お目付役・島田新左衛門(役所広司)が命を受け、刺客を集めた。集まった刺客たちは参勤交代の途中を狙おうと落合宿を決戦の場と決め、先回りするのだった・・・。
松方弘樹は息切れしないか心配し、古田新太は老け役なのかほんとうに老けたのかとびっくりし、稲垣吾郎の藩主は驚くほどはまり役だったがジャニーズ事務所はよくこの役を許したなと思い、平幹二郎や松本幸四郎、市村正親、岸辺一徳などベテランがキラキラと光っていた。殺陣はどこまでが本人でどこまでがダブルか分からないが、松方弘樹はやはり誰よりも綺麗だった。意外だったのは山田孝之で、けっこうさまになっていた。香港の俳優が多少とも映画でなんらかのアクションを強いられるのと同じで、日本の俳優はだれしも時代劇の役が回ってくるかもしれないと、居合抜きや剣道ぐらい練習しておかなくてはいけないと思う。
落合宿のセットは大がかりで想像力豊か。もちろん江戸時代にこんなばかげた仕掛けなど作らないだろうが、時代劇など所詮フィクションだと思えば面白い方が勝ち。屋根に橋をかけてみたり、木を組み合わせた巨大な扉が道の両側から現れ道を寸断したり、《風雲》の刀塚よろしく刀があちこちにささっており、斬っては新しい刀を抜き斬ってはまた新しい刀を抜くという、《男たちの挽歌》で周潤發がピストルを植木鉢に隠し置いてつぎつぎと取っていくのをど派手にしたような場面やら、伊勢谷友介の山猿のような動きなど、とにかく目が離せない。そして斬っても斬っても減らない敵は、見ている方も疲れるほどしつこい。
映画始まってすぐの真上から明石藩家老・間宮の切腹では刀が腹に刺さる音や内蔵を切る音がいやらしく、首はたくさん飛ぶし、至近距離で矢を人に向けて放ってみたり、手足を切られた女や久々に時代劇でみたお歯黒で眉のない女性など、グロテスクなシーンもかなり多い。しかし何より感心するのは、江戸時代、藩、武士などがいっこうに分からないであろう外国人が見てもエンターテインメントとして楽しめるようになっていることだ。
そして日本人の私たちには、たとえ暴君であろうととも藩主を守らねばならないというばからしさ、事なかれな江戸幕府のお裁きが、まるで現代日本そのものに見える。日本社会は江戸時代からまったく変わってない。新左衛門は現れないのか・・・・。
2012.3.31@香港國際電影節(香港文化中心)
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