侠女(侠女)

《侠女》
徐楓、石雋、白鷹、喬宏 
胡金銓:監督 1971年 聯邦・國際


顧省齊(石雋)は母と2人暮らしで、街で代書屋を営んでいる。母から科挙を受けて役人になるように再三言われているが、本人はその気がない。ある日、顧省齊のところに1人の男がやってきて似顔絵を頼んだのだが、彼を注意深く見ていると何か不審なものを感じた。同じ頃、荒れ果てているはずの隣家に美貌の女性・楊慧貞(徐楓)が住んでいる事を知り顧省齊は気になってしかたがない。


宦官の陰謀で殺害された大臣の娘が、父の腹心だった将軍とともに敵を討とうとするところに好んで巻き込まれていく男。原作は蒲松龄の『聊齋志異』。
劇中、徐楓と白鷹は僧侶に助けられ、さらには武術を仕込まれているという設定。僧侶を演じているのは喬宏。さらに韓英傑(この映画の武術指導でもある)が憎々しく強い。その他、印象に残るのは石雋と徐楓の眼、衣装などなど。
石雋は善良な人の役だが、その瞳をかっと見開くと少々狂気が宿っている。徐楓は男顔できりっとしていて、よく見るとけっこう兇悪な顔をしている。出演者の誰もが眼が特徴的で時に眼だけのアップが映し出される。人がぴょんぴょん飛び跳ねるアクションシーンではトランポリンを使っている。竹林のシーンは有名で、竹に飛び移った徐楓が剣を握って真っ逆さまに敵に向かっていくシーンは細かいカット割りでその驚異の動きを表現していて圧倒される。李安(アン・リー)監督《臥虎蔵龍》でも竹林のシーンが登場するが、これは明らかに《侠女》へのオマージュである。
また衣装も特徴的で、頭に被る平たい菅笠のようなものはドーナツ型になっていて真ん中がぬけていおり、笠からひもが2本垂れている(韓国の古装に似ているものがあるように思う)。女性の笠では、薄布を垂らしていて顔が見えないようになっているのだが、これは日本の平安時代の女性の外出姿である市女笠に虫垂れぎぬをつけた姿(笠に薄い布を垂らしている)に似ているので、もしかしたら何か参考にしたのかもしれない。着物は幅の広い(和装でいえば)白い半襟がついていたり、身の回りのものを入れる袋を肩から掛けていたりする。
最後の夜の戦いのシーンでは、人形を使って敵を欺いたりする一種の機械仕掛けが登場するのも面白い。とにかく衣装や小道具など細かいところを見ているだけでも興味がつきない。
2012.12.14@香港電影資料館(侠影禪章―話説金銓)


■□12年に見た映画一覧□■
この日は、胡金銓特集の初日ということで、台湾からやってきた石雋らも一緒に鑑賞した。