追凶(惨劇のサイケデリア)

劉青雲ラウ・チンワン)、王寶強(ワン・バオチャン)、江若琳(エレイン・コン)、萬綺雯(ジョーイ・マン/マン・イーマン) 彭發(ダニー・パン):監督 2012年


自閉症の子供をもつ刑事の王(劉青雲)は、仕事を口実に家庭をおろそかにしてきた。特に障害を持つ自分の子供に対して優しい言葉をかけてやることもなく、妻(萬綺雯)との関係もぎくしゃくしていた。そんなある日、警察署に顔を白く塗った不審な男(王寶強)がやってきて「人を殺した」と言い張った。王と部下は男の言葉を信じて、殺したという男の住まいを尋ねると、男はぴんぴんしていた。警察をからかったと判断して、不審な男を解き放った。さらには男が警察にやってきたという事実も、無駄足を踏んだことを恥だと感じた部下たちは報告書から削除、王はそれを見逃した。
翌日、男の死体が発見された。現場へかけつけた王らは驚いた。死体は昨日生存確認した件の男だったからだ。さらに現場で発見した白い塗料を密かに持ち帰り、証拠隠滅しようとした。
さらに王たちを嘲笑うかのようにまた一人、残忍な殺人が起こった。王たちが、あの白塗りの男と殺された者たちの関係をさぐっていくと、そこには・・・・。


犯人探し映画で特に犯則技だと思うことがいくつかある。犯人が非常に特殊な性格の持ち主だったり、なんらかの障害を持っているなどの設定で、その特殊な事情で殺人方法や動機を説明してしまおうという映画だ。最近一番犯則技だと思ったのは郭富城(アーロン・クォック)主演の《殺人犯》。
《追凶》も初見時にいい印象がないのは同じような理由によるものだ。犯人をごく普通の人物(ただし、その境遇により社会になじめない、または不遇をかこっているなどの性格付けはあるだろうが)という設定でも十分に物語は作れると思うのだ。殺人の手口にしても、それは高度な”見立て”によるものだし、特に終盤の廃ビルの装置も頭脳明晰な人物が考えるものだと思うのだ。そんな頭脳明晰な人物をこの映画のようなキャラクター(格好や話方も)に作り上げるのは反則技。
またこの映画では、家族の再生も同時に語られていくのだが、殺人事件と家族の再生の二つが無理矢理に関連づけられている印象をぬぐえず、そこも興ざめしてしまう一因である。
王寶強の強烈な個性や江若琳のがんばり、人でなしの劉青雲といった希有なものが見られるだけに、非常に残念でならない一作である。
2014.5.27@Cinemart六本木
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