青梅竹馬(台北ストーリー)

《青梅竹馬》
侯孝賢、蔡琴、呉念眞、柯一正 楊徳昌エドワード・ヤン):監督 1985年

マンションの部屋を見に来た阿隆(侯孝賢)と阿貞(蔡琴)。阿貞は家具の配置を考えて盛んに意見を言うが、阿隆は乗り気がしない様子。「内装にお金がかかりそうだ」という阿隆に阿貞は「昇進するから大丈夫」という。阿隆にはアメリカに移住した姉がいるが、自分は家業を継いで迪化街で布地問屋を営んでいる。阿貞は実家を出て不動産会社に勤めるキャリアウーマンだ。2人は幼馴染。


うまくいっているようないっていないような2人の関係。阿隆はアメリカにいる姉夫婦を訪ねて台北に戻ってきたところで、成功している義兄を頼ってアメリカに行くという選択肢もあるとは考えているが、あまり積極的ではない。阿貞は同僚の妻子ある男性との関係が曖昧な様子。阿貞の父は商売がうまくいっていない。妹にも少々問題が。話が進んで行くに従ってだんだんと2人の事情が明らかになっていく。


途中、阿貞が友人たちに阿隆を紹介する場面。阿貞の友人の男性たちは会社員で、名刺を持ち歩き、人に会えば名刺を出して挨拶する。阿隆の職業を聞いて「紡績業だろう」というが、阿隆は「違う、布地を売ってるんだ」という。阿隆は古い体制に属していて、阿貞は新しい世界観の中にいる。2人の帰属する社会が違うことがはっきり分かる場面だ。
この新旧の対比は映画全般を貫いて描かれていく。阿貞と元上司の女性のドライな関係、阿隆と元リトルリーグのチームメイトや阿貞の父のウエットな関係。印象的な富士フィルムを始めとするNECソニー日系企業のネオンサインと、迪化街の建物。阿貞の今の住まいと実家の佇まい。ディスコとカラオケスナック。というように街の景色も新旧の対比が描かれている。
幼馴染(青梅竹馬は中国語で幼馴染の意味)の2人は、変わりゆく台北の新旧の象徴で、まさに台北の物語(台北ストーリー)なのだ。阿隆と阿貞の父が酒を飲んで酔っ払っているシークエンスで、車のライトに照らされる迪化街の建物が儚くもあり美しく心に残る。
2017.05.07@ユーロスペース


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