做頭(愛さずにいられない/做頭)

《做頭》
關之琳(ロザムンド・クワン)、霍建華(ウォレス・フォ)、呉鎮宇(ン・ジャンユー) 江澄(ジャン・チョン):監督 2005年 DVD


美容院を舞台に、結婚生活に満足できないエニー(關之琳)と美容師・阿華(霍建華)をめぐる物語り。
エニーは、若いころは街一番の美人といわれ、彼女の写真は美容院のショーウィンドウを飾り、みなが彼女の顔を見に美容院にやってきた。それから10年近くたった今は、新聞社につとめる冴えない夫(呉鎮宇)と娘と、古いアパートで質素に暮らしている。エニーは夫との暮らしに満足できず、昔の自分が忘れられない。髪型も昔と同じ。今は流行遅れになってしまっている長年通っている美容院では、いまでも彼女の写真が飾られていて、美容院へ行くと、店員たちはエニーを上客として扱ってくれる。美容師の阿華(霍建華)との美容院での時間だけが、彼女の心のよりどころだった。


映画の最初からかなり途中まで、映画に描かれている時代が今現在のことなのか、かなり以前のことなのか、判別がつかない。映画の中でも語られる關之琳の髪型や、住まい、美容室のたたずまいのせい。時代にとりのこされたような風景が、いま現在の話しだと思えない緩慢な雰囲気を醸し出す。さらに關之琳と、彼女よりは若い美容師(霍建華)との関係、關之琳と夫との関係などすべてが曖昧で、停滞しているからだ。


「做頭」とは髪をカットしたりすること(北京語)。美容師に髪をカットされたり、洗髪してもらう行為がセクシーだと感じる気持ちは分かるが、その部分はあまり追求されない。そこで思い出したのは「エロス」の王家衛(ウォン・カーワイ)の「手」だった。こちらの方が遥かに強烈な印象が残る。もちろん映画の目指すところが違うのだが。
けして出来が悪いということはないのだが、ひと時代前だったら、もしくは時代設定がひと時代まえだったら、いい映画と言えるのかもしれない。いまの時制でこの映画を撮る意味を考えたら、これでいいのかと思ってしまう。エニーの髪型のように、映画も過去を懐かしんでいるかのようだ。しかし最後になって唐突に現代がやってきて、エニーの髪型も変わって終わる、これまた不思議な展開。


阿華を演じる霍建華は台湾の若手らしく(他に見たことがないので)、監督は大陸の人で(他に何か撮っているのかは不明)、關之琳(まだ十分綺麗だ)と呉鎮宇(台詞が少なく出番もあまり多くない)は香港という両岸三地映画(勝手な命名)。映画会社は「中国星」。香港ではごく一部の映画館で公開された。


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