05年のアジア映画

2005年の中国人映画は、数本の大作が市場を支えていた。それぞれ国を越えた合作だったが、香港にしろ、大陸にしろ、どとらか一方の俳優では吸引力不足だということも浮き彫りになった。香港映画はますます外国へ向かい《頭文字D》の日本化、《韓城攻略》で韓国を走り抜け、《神話》と《喜馬拉亞星》にはインドの風景が登場したが、実のところ新しさには欠けていた。《無極》《情癲大聖》は大いにCGのお世話になったが、理想的とは言えなかった。
大陸の映画マーケットは潜在能力があるが、発展途上。現在はほんの数本の大作でにぎわっているだけ。その他の中国製映画は数百万元を稼げばすでにまあまあの状態だが、十数億の人口と比べれば、いいとは言えない。賞を貰った大陸の映画《孔雀》《一個陌生女人来信》《青紅》などはいずれも香港では一般公開されていない*1。陸川(ルー・チュアン)の《可可西里(ココシリ マウンテンパトロール)》は公開されたが、香港の人々はほとんど気にとめることはなかった。
05年中国人男優と監督は西洋の映画界でも頭角を表すことは難しく、李連杰ジェット・リー)《不死狗(ダニー・ザ・ドッグ)》では精彩を欠き、ついに章子怡チャン・ツィイー)ら女優たちがハリウッドに打ってでることになった。王家衛(ウォン・カーワイ)監督《愛神(エロス)》は比較的よく出来ているが、とくに変化は認められなかった。台湾映画もまだまだで、蔡明亮ツァイ・ミンリャン)《天邊一[几/木]雲》ではエロを取り上げとりつかれたようで、侯孝賢ホウ・シャオシェン)《最好的時光(スリータイムズ)》は全体としては悪く無いが、已然として退屈な芸術作品。香港で公開された日本映画、韓国映画も多く、香港映画の空白をうめる役割りだったが、興行成績のよかったものは少ない。宮崎駿のアニメ《ハウルの動く城》は見どころがあり、日本の2人の少女の映画《下妻物語》《NANA》は興味深かったが、《電車男》は興行的には成功にはほど遠かった。韓国映画で最も突出していたのは《親切的金子(親切なクムジャさん)》。タイのアクション映画《冬蔭功(トムヤムクン)》は最も生きがよかった。
私が10大東南アジア映画を選ぶなら、《ハウルの動く城》《黒社会》《親切的金子》《冬蔭功》《NANA》《b420》《頭文字D》《可可西里》《愛神》(王家衛部分)、《最好的時光》。by2006.1.4「明報」石[王其]記(かなり意訳)

私個人は、香港映画以外あまり見ていないので、意見は言えないが、香港で上映される韓国映画といえば、コメディとホラーが主。泣かせる映画は日本のようにはヒットしない。

*1:《孔雀》は香港国際映画祭で上映、《青紅》は亞洲電影節と中国映画祭で上映、《一個陌生女人来信》は中国映画祭で上映されたのみ