《黒社会》選挙の問題点

以下、ねたばれなどあります。必要以上の情報を得たくないかたは読まないでください。

昨年香港では、《黒社会》は評判も、興行成績もよく、興収は1600万香港ドルだった。現在上映中の第2集《黒社会以和為貴》もまた賑わっており、興収も1000万を越えている。
第2集はドラマ性では1集に及ばないが、2つの滑稽な場面がある。それは、3級な酷刑以外に、重要なことは政治性で、中央と香港のセンシティヴな関係に触れ、選挙問題を揶揄しているところだ。この2作品は英語のタイトルはElectionとElection2だが、第2集になりドラマは毒をもった。
この欄で前回《黒社会以和為貴》を語った時には、物語の鍵になる政治性について触れるのははばかられたが、すでに上映が始まり数週間たつので、ここで論じてみたい。黒社会の「愛国」については特に問題にはならない。この映画が最も大胆なのは、黒社会の選挙が、中国政府の香港普通選挙反対を投影しているからだ。劇中、大陸の公安は香港の黒社会の主役に向かってはっきりと、選挙が繁栄と安定をさまたげるので、今後彼が続けて「取りまとめ役」をし、任期によって改選する組みの規則を破るようにというのだ。
この場面は刺激に満ちている。このショッキングな内容は、20年前の《投奔怒海(望郷・ボートピープル)》に及ばないが、97年の香港返還以来の香港映画では、最も激烈な政治的火花を散らし、中国と香港の最も大きな「病」を示唆しているのだ。また民主選挙をさせないことが、中国が海外から批判されていることでもあるのだ。
映画に乗じてパンチをくり出す効果は成功した。しかし真剣に見ると、ストーリーは故意に作られており、説得力は十分ではない。黒社会はもともと強権主義で、選挙などない。劇中香港のある組には選挙の伝統があると話すが、これは明らかな虚構で、実際は組内で権力者が殺しあい、手荒く無情で、正式な選挙など存在しないのだ。
また劇中、いわゆる組の選挙は、叔父貴たちが推薦するという形で、けっして民主的な選挙ではない。現在中央が認可している香港の特首の選挙方式もこのような形式だ。このようなストーリーは中国に反感を持たれないのだろうか?(上)by 2006.5.8「明報」石[王其]記