狗咬狗(ドッグ・バイト・ドッグ)

《狗咬狗》陳冠希エジソン・チャン)、李燦森サム・リー)、林雪(ラム・シュ)、張兆輝(チョン・シウファイ)、黎耀祥(ライ・イウチョン)、林嘉華 
鄭保瑞(ソイ・チェン/チェン・ポウソイ):監督


あるレストランで殺人事件が起こる。あきらかに殺し屋によるものだ。現場に眠そうな顔で駆け付けた警官・偉(李燦森)は、上司にどなり付けられる。
ビルの外に怪しいタクシーを見付け、後をつけると付近で犯人(陳冠希)らしき人物を発見するが、相手は凶暴なヤツ。何のためらいもなしに警察官や一般市民を殺す。一度は犯人を捕らえるが、護送途中で逃亡されてしまう。
この狂暴な犬のような犯人を、偉は上司の命令をことごとく無視し、単独で執拗に追い掛けて行く。


物語りはかなり全編緊張。アクションというか暴力シーンは強烈で、目を背けたくなる場面も多いのは確か。監督がリアルを求めたために、生々しいシーンが多い。血に弱い人には、けして薦められない。
しかし根底に貫かれているのは、家族(父子)の情や生命、つまり生きるということ。暴力を見せるための映画ではなく、生きることを見せるための暴力描写になっており、メッセージはきちっと伝わってくる。


陳冠希は、顔をすすだらけにしながら、卑しい犬のようなヤツを演じているのだが、猫背で細い陳冠希が、やせ犬のように見えて、これがなかなかよい。台詞は極端に少なく、カンボジア人という設定ゆえ、話す言葉はカンボジア語。犬のように狂暴なヤツが、やはり悲惨な運命の女性を知って、自らの中に何かが芽生える。このあたりの変化も、ありがちな話しだが、上手く演じている(女性の扱いはかなり酷いが)。台詞がないぶん、表情、目の動き、動作など、工夫したようだ。


さらに好いのが李燦森。ネタバレになるので、あまり詳しくは書かないが、父との確執、心に何かを溜めていて、その発露として、執拗に犬のような犯人にこだわっている。複雑な感情を持った人間を、きちっと演じている。こちらもかなりびっくり。
同じ鄭保瑞の《愛。作戦》がどうも生理的に好きになれなかったのは、最後が悲惨すぎるから。今回も相変わらず悲惨だし、気分的にグロだが、少しばかり希望のようなものがある点は救いかも。
2006.8.12@嘉禾威港「優先場」+座談会
この映画はIII級。暴力的だということと、近親相姦が出てくるため(←これが含まれると必ずIII級になるそうだ)。
実は15日のプレミアにも呼んでもらったので、もう1度見ることに。2度目は感想が変わるだろうか。


《狗咬狗》のロケ地については、ココを参照。


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