ゆれる

オダギリジョー香川照之真木よう子伊武雅刀蟹江敬三新井浩文 
西川美和:監督


兄弟の映画であり(オダギリジョー香川照之伊武雅刀蟹江敬三)、推理劇でもある。ゆれるのは、劇中のオダギリジョー香川照之だけでなく、映画が進むにつれて、観客の心も真実を求めて、主人公同様に揺れてゆく。主演の2人の心のゆれと立場のゆれが、画面からいやというほどじわじわと伝わってくる。そのゆれの表現がすばらしい。邪推、憶測、推理、推測、嫉妬、羨望、信頼。オダギリジョー香川照之、どちらも他にはありえないという確実な演技が物語を貫いていて、最後の場面になっても、この兄弟の関係がこのままでは終わりそうにないと感じられる。


なんでもないカット(いや、見ようによっては、非常にけれん味があるともいえる場面)が心に残る。初めの方、母の葬儀で怒った父が倒した食事や酒を拭く兄の足に徳利から酒がしたたりおちる場面。最後の方、弟がドアを閉めると、バットに張った水が振動を受けてさざなみが立つ場面。どちらも何かの始まりが暗示されているように思えて、至極印象に残っている。
そういった細かな場面の積み重ねが、より一層話しに深みを持たせていくように感じた。その表現の細やかさが、いかにも日本映画だと感じる。平日の昼間だというのに、ほぼ満席だった。
2006.8.22@新宿武蔵野館


ひとつ気になっているのは、タイトルがわかり易すぎること。わかり易いから客が入っているのかもしれないのだが、このタイトルなら観客は最初から「ゆれる」モノを見ようとやってくる。それじゃつまらなすぎる。ひねくれモノの私としては、違うタイトルにして欲しかった。違う気分で来たら、そうじゃなくて心が「ゆれ」た、と。その方が、感動は大きいなと。


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