我要成名

《我要成名》劉青雲ラウ・チンワン)、霍思燕(フォッ・シーイン/フォ・シーヤン)、黎耀祥(ライ・イウチョン)、曾國祥(デレク・ツァン)、余安安(ユー・オンオン)、陳果(フルーツ・チャン)、許鞍華(アン・ホイ)、陳嘉上(ゴードン・チャン)、趙良駿(サムソン・チウ)、方平(ヘンリー・フォン/フォン・ペン)、梁家輝(レオン・カーファイ)、鄭伊健(イーキン・チェン)、周麗淇(ニキ・チョウ) 
劉國昌(ローレンス・ラウ):監督


30も半ばの俳優・潘家輝(劉青雲)は、出たてで新人賞を受賞、演技については自身の理論ありだが、その後ぱっとせず、いつまでたっても認めてもらえない大部屋俳優。法廷劇の撮影では、監督の指導に異義を唱えて演説してしまった。それを見ていたエキストラの少女(霍思燕)が撮影後、家輝を付けてきて、弟子にしてくれと懇願した。
ある日、家輝がテレビ局へ契約更新に行くと、年俸制ではなくなって、ドラマ1作ずつの契約になっていた(年俸制から1作ずつの契約、これはTVBのことを模している)。怒った家輝は、契約書をびりびりに破いて突き返した。
やけ酒を飲んで、タレント事務所を経営する昔の彼女(余安安)を訪ね、そのまま飲んだくれて彼女の家で朝を迎えるはめに。翌朝、彼女の下にタレントの卵たちがやってきた。中の1人は、先日、家輝に弟子にしてくれと懇願した少女だった。この日、彼女は旺角で撮影だったが、彼女を撮影場所までつれて行く助手が見つからない。どうした風の吹き回しか、家輝がつれて行くと言い出した。
現場で上手く出来ない彼女に、家輝がちょっとした智恵を授けると、彼女は予想以上にうまくやってのけた。このことがきっかけになり家輝は、彼女に演技指導をしいっぱしの女優にしたて、彼女のマネージャーになった。彼女はめきめきと頭角を表し、どんどん売れっ子になっていった。しかし・・・。


女優志望の少女は、杭州から香港へやってきたという設定で、広東語の発音が少し変。《マイ・フェア・レディ》のように訛りを矯正こそしないが、少女を自分の思うがまま(の女優)に育てようとする。しかし最後に少女は、自分の意志で行動を始める。ここからがいわば、この映画の本質。劉青雲が、自らを見つめ直し、散らかっていた部屋を片付け、窓を綺麗にし、ランニングをしてなまった身体を鍛え、冷蔵庫のビールがミネラルウォーターに変わっていく。身なりに気を配り監督に会いに行く。「我要成名」なのは劉青雲自身なのだ。


監督たちが監督役で、俳優も実名で出演、影帝役には梁家輝、かつて賞をとりながらも今は自動車修理工になっている男に黎耀祥、黄柏高(ウォン・パコ)を思わせる役に方平(そっくり)。霍思燕は、一見子供っぽく見えるが、好く見るとふけ顔。細そうだが実は意外に胸はありで、多少露出する部分があるが、ダブルを使わず自ら演じたそうだ。大陸ではドラマに出演しているらしいが、香港人にとっては新人と同じ。こういう役は馴染みのない女優のほうがいい。しかし声は、大陸なまりだがやはり吹き替えで、声がいまいちなのが悔やまれる。


今年の金像奨会場での撮影もきちっと使われていた。
監督の劉國昌(ローレンス・アモン/ローレンス・ラウ)は、南アフリカ生まれの華僑。《童黨(ギャングス)》《五億探長雷洛傳(リー・ロック伝)1&2》などを撮っている。
《黒白道》もこれも派手さはない。しかしどちらも脚本がきちっとしているし、主題もはっきりしている。小品だが出来はよいと思う。あとでじわじわくる。
2006.9.1@旺角百老匯


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