香港映画を救え−香港映画起死回生の妙薬は

香港映画は不振、製作本数が減っているだけでなく、上映される映画も年々少なくなっている。興行成績は下がり、まだ底が見えない。今年になって4480香港ドルという驚く数字が出た(《反対斗狂奔》*1)。ソフト市場も映画産業と同様の運命を辿り、売り上げが下降線、4割減だ。寰宇の社長・林小明は、「ビデオも商売にならない。すでに衰退している」と嘆いた。映画と密接に関わる映画館は、供給する映画の数が少ないうえに、香港中では約4万6千しかない座席数が、今年の興行成績に影響し、その経営は苦しい。いったい何が弱って点滴をしている香港映画産業を救い、健康な身体に戻してくれるのだろうか。あるいは死亡宣告をすることになるのだろうか。資金と、大陸だのみが、現在の映画産業が唯一現状から抜けだせる道のようだ。
映画の資金は、外国の出資を受けることで、製作費の大きい質の高い中国語映画が製作できる。資金があれば、有名な監督にオファーし、有名な俳優で撮影できる。加えてよい脚本と、あらゆるものがそろえば、目指すは世界各地の市場。香港市場はすでに次ぎにおかれている。ここ数年、《臥虎蔵龍(グリーン・ディスティニー)》《英雄(HERO)》《十面埋伏(LOVERS)》《霍元甲》など、多くの出資を受けた中国語映画が出現している。
・洲立
西洋映画の配給を20年以上おこなってきた洲立影片公司の社長・黎筱娉(テリー・ライ)は、さまざまなところから合作して中国語映画を撮影しないかと言ってくるので、資金の問題はないという。洲立は今年初めに映画製作に乗り出すと宣言した。しかし噂だけで、今になっても撮影する様子はない。今年初めに配給した香港映画《得[門月]飲茶》の興行成績がたった66万香港ドルだったのに恐れをなしたのか。黎筱娉はそれを否定して「会社は一貫して西洋映画の配給をしてきた。いまになっても映画製作を始めないのは、まだ初歩の段階で模索中だからだ。物事は慎重にしなければならない。資金があるからと相手が撮りたいからと盲目的に撮影はしない。まずは脚本、スタッフなどを見てから。しかし何か事件がないかぎり、07年には撮影する」と話した。
黎筱娉は西洋映画の配給をしてきたが、香港映画にも関心を寄せている。市場を救済するために彼女は映画業界とともに、政府に協力を申し出ており、「7、8か月話し合った。現在は目鼻がついて、来年には発表できるといい」としている。
・安樂
資金についていえば、安樂公司は一流といえる。2000年に撮影した《臥虎蔵龍》は、香港ではそれほどでもなく、興行成績は1476万香港ドルだったが、安樂は活気のない香港市場は相手にしておらず、照準は外国と中国大陸だった。策略は成功。オスカー外国語映画賞にノミネート、映画の価格は10倍以上になり、資金は潤沢になった。このときから安樂はとまることなく撮影している。02年には《英雄》が2667香港ドル、04年には《十面埋伏》が1429万香港ドル、06年の旧正月映画《霍元甲》は3020万香港ドル、そして今年の末には3.6億元を出資した《満城盡帯黄金甲》には、張藝謀監督にかつてのパートナー鞏俐(コン・リー)、さらにハリウッドスター周潤發(チョウ・ユンファ)が出演する。香港がいくら稼ごうがかまわない。海外へ売れればもとがとれる。もともと香港市場は頭にない。さらに現在撮影中の《色・戒(ラスト、コーション)》は、《ブロークバック・マウンテン》でオスカーを取った李安(アン・リー)監督、影帝・梁朝偉トニー・レオン)の組み合わせで、すでに興行成績を心配する必要はない。
・未来は
王家衛(ウォン・カーワイ)の澤東と陳可辛(ピーター・チャン)のApplause Picture公司はともに出資社で、最近になり映画撮影を始めた漢文化公司は、香港の映画産業は変化の最中だと認める。漢文化公司の張承は、「未来、香港映画の身分や位置などすべてが変わるだろう。配給や出資の中心になり、生産は海外でとなる。観客はというと、映画は見続けるが、それは香港映画ではなく、『香港が融資した映画』を見ることになるだろう」と話した。by 2006.9.26「明報」

哀しすぎる。ここで中国語映画と言っているたぐいの映画は、一応見ているが、私の心をほとんど動かさない映画たちだ。こんな映画だけが、今後、香港(中国も)を代表する映画になってしまうのは、なんとも情けない。それなら私は、興行成績たった66万香港ドルの《得[門月]飲茶》を支持したい。

*1:《反対斗狂奔》は元朗戲院だけで上映されたので、特別な例だと思う。