無味神探

《無味神探》劉青雲ラウ・チンワン)、李若彤(カルメン・リー)、庹宗華(トゥオ・ツォンホア)、黄卓玲(ルビー・ウォン) 
杜琪峰(ジョニー・トー):監督 1995年 邵氏 DVD


刑事の劉(劉青雲)らは、囮を使って麻薬密売組織を取り押さえようとしていたが計画は失敗、囮は殺されてしまう。現場に踏み込んだ劉は、犯人(庹宗華)ともみ合うが取り逃がす。しかし犯人は大金を失い、劉は犯人の恨みを買うことになる。
劉の妻(李若彤)は、家庭を顧みることにない夫に愛想をつかし、不倫のすえ妊娠、劉との離婚を考えているが、それすら劉に伝えられずにいる。劉は、バーの女性(黄卓玲)とワンナイトスタンド、その女性に誘われて入ったレストランで、恨みを買った犯人から襲われる。からくも犯人を取り押さえるが、劉は頭部に負傷し、命はとりとめたものの、味覚と臭覚を失っていた。


仕事は出来るが、相手の気持ちを思いやることができず冷淡で自分勝手な男は、怪我をして初めて、妻の大切さを知り、相手を思いやることができるようになる。妻もまた、自分にとって最も大事な人は不倫相手ではなく、夫なのだと気づく。一度は壊れかけた夫婦が再生する物語と、警察と犯人の戦いが同時に進行していく。


妊婦の李若[丹彡]がことごとく犯人に痛めつけられる様子は、《真心英雄(ヒーロー・ネバー・ダイ)》(1998年)を思い出し、廃ビルでの犯人との戦いは、《暗花(ロンゲスト・ナイト)》(1998年)の劉青雲梁朝偉トニー・レオン)の戦いを思い出し、爆発場面では《十萬火急》(1997年)を思い出す。
そして、同じ杜[王其]峰作品で、駄目男が再生する話しとしては、《阿郎的故事(過ぎ行く時の中で)》(1989年)と《再見阿郎》(1999年)を思い出す。《阿郎的故事》のバイクレースは《無味神探》では銃撃戦にグレードアップ。《再見阿郎》では余韻を持って終わる恋の結末を、《無味神探》では夫婦の再生として映画の中で完結してみせている。
つまり《阿郎的故事》がドラマにアクションを加え、《無味神探》ではドラマとアクションの五分五分での融合を試み、《再見阿郎》ではアクションは姿を消しドラマだけが残るという流れになっている。《無味神探》は、時期的にも2つの作品の中間に位置するとともに、杜[王其]峰の駄目男再生物語の発展(進化)過程においても中間に位置するのだと思う。


出演者の中に今は監督の麥兆輝(アラン・マック)がおり、エンドロールで林雪(ラム・シュ)が雑務として記載されていた。


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