寰亞綜藝集団主席・林建岳

昨年の記事だが興味深いと思うので訳しておく(意訳あり)。

寰亞綜藝集団は近年、香港の映画産業に積極的に投資している。寰亞の主席・林建岳(ピーター・ラム)は明報の独占インタビューを受けた時に次のように語った。香港の映画産業が低迷期に入った主な原因は、風潮に流されむやみに映画を撮ってきたことによる。これからは大陸マーケット、特に広東のマーケットへの進出が進んでいく道だ。《無間道(インファナル・アフェア)》と《投名状》の投資者は、映画への投資を決める前には脚本を見ない。なぜならストーリーへの思い入れが過ぎ、その映画に売れる要素があるかどうか、冷静な判断が出来なくなるのを恐れるからだ。彼は成功したどの映画についても、セールスポイントがどこか言えるのだ。


林建岳は《無間道》を例に、香港映画産業が繁栄から衰退に至った原因を説明した。《無間道》が出る前の一定期間、すでに10数本のアンダーカバーを題材にした映画が撮られていた。しかし《無間道》ほど優れたものは出来なかったし、このような大きな成功は得られていなかった。鮑やフカヒレを食べ慣れた客には、佛跳牆(坊さんも壁を飛び越えて食べに来るという美味しいスープ)を作ってやって、やっと美味いと感じ満足する。《無間道》を撮ると決めたのは、劉徳華アンディ・ラウ)と梁朝偉トニー・レオン)は長い期間一緒に映画を撮っていなかったし、潜入警官ものは当時流行っていなかった、それでこれはチャンスがあると思ったからだ。


林建岳は父親の林百欣を手伝い亞洲電視の仕事をしていたことがある。この経験が映画に投資する元になった。また亞洲電視の競争相手である無線電視の実力を身を以て体験した。近年、無線は制作費を省くためドラマ製作を減らし、よそからのドラマ購入が増えている。林建岳は香港映画を衰退に導いた主な原因は、風潮に流されむやみに映画を撮ってきたことによるといい、香港の映画人は、杜[王其]峰のように、みな無線の訓練を受けて出て来ている。今は後に続く人がいないのだと話す。


香港映画産業の衰退は、製作過程がいい加減だからだとも言われている。もしアメリカと同様にクランクイン前に脚本が整っており、撮影過程と出費を厳しく計画的に行えば、けして滅びてしまうことはないと。しかし林建岳の意見は違う。アメリカの制度には良いところも悪いところもある。良いのは製作過程ではすべてが予定の中ですすめられていくこと。欠点はフレキシビリティがないこと。組合の力が強く、製作者は環境の変化によるさまざまな影響をなるべく受けないようになっている。アメリカ式は大資本の豪華キャストの映画には相応しいが、少ない資本の映画には不適だ。アメリカ映画は大チェーンのファミリーレストラン、香港映画はプライベートキッチンだ。


またある人は、韓国映画が近年勢いがよく、それは韓国政府が自国の映画産業の発展に大きなサポートをしているからだといい、香港もそれにならうべきではないかという。林建岳はそのとおりだとも、そうではないともいう。彼は韓国政府が韓国映画振興において重要や役割を果たしていることは認める。最も顕著な例は、韓国ドラマが日本のドラマ市場に進出していることで、韓国政府は映像作品の輸出を応援するために、巨額を投じて日本のテレビ局のゴールデンタイムの枠を買い、韓国ドラマを放送し続け、大量の広告を送り続けている。日本のテレビはそれに応じているために、日本の視聴者は韓国ドラマを見ることが習慣になり、やめようとしてもやめられなくなっている。日本における韓国ドラマの収益が韓国全体の収益を越えるまでになっている。しかし、香港は開かれた社会だ。政府が映画をサポートしても、韓国政府のようにするのは不可能。韓国では週末の映画館はすべて韓国映画の放映に当てられており、外国映画上映には制限があるのだ。


香港映画産業の出口はどこに? 林建岳は疑いもなく言う。それは中国語マーケットだと。中国大陸には13億人がいる。東南アジアと海外の華僑も億を越える。中国語と英語、スペイン語が世界の三大言語。「香港人アメリカ人のようにSF映画をうまく撮れない。しかし中国語映画を撮れば、香港人のようにうまく撮れる人は他にない。」これがこの映画産業低迷時にも投資し映画を撮り続ける理由なのだ。


大陸市場については、特に広東に注目している。広東だけでも億の人がいる。長期間香港のテレビドラマを見ており、香港映画にも慣れ親しんでいる。中国ではその地方の方言のテレビ局がない場所はない。上海も経済力があるが、テレビは上海語ではない。しかし広東なら可能だ。さらに香港映画が広東に入っていっても、外国文化が侵略してきたと見なされることはない。条件を整え広東がより自由な市場になっていくようにしていくように、香港政府と映画界は大陸の各関係部門と調整をはかり、1日も早くその道を開いて欲しい。by 2007.12.12「明報」

韓国ドラマのくだりはちょっと怪しい気もするが、その他は意外にまともな考えだろうと思う。脚本を見ないとはいっているが、大まかなストーリーは聞くとは思うのだが。