杜琪峰

今日から公開の《蝴蝶飛》について、杜琪峰(ジョニー・トー)が語っている。

Q:大陸の女優を主演女優にして、台湾の俳優を主演男優にしたのは、何か特別な意味があるのか?
杜:《蝴蝶飛》は非常に特殊だ。李冰冰(リー・ピンピン)は大陸の俳優で、周渝民(ヴィック・チョウ)は台湾の俳優だ。僕も脚本の岸西(アイヴィー・ホー)も香港だ。こんなスタッフで作った作品は、きっとすべての中国人に受け入れられる。なぜならみんなの愛情に対する感覚は同じだからだ。
Q:李冰冰はこの映画を撮影して、鬱になりそうだったと話していたといわれている。あなたは俳優をいじめるのが好きなのか?
杜:脚本が出来て俳優の手に渡ったら、どう役を演じるかは、完全に俳優自身の事情によると思っている。僕は普段は何もいわず、彼らにまず演じさせる。演じたあと僕が評論する。李冰冰は撮影を始めた1週間ぐらいは辛かっただろう。なぜなら彼女の演技は僕が想像しているものと違ったからだ。それに彼女はすごく緊張していた。演技をしていない時、現場で彼女を見るとかなり緊張している様子だった。僕は彼女を北京に返して、少しのあいだぼーっとさせて、それから話しをした。その後、彼女が撮影に戻って来てからは、僕が望むものが現れてきたんだ。キャラクターが経験することも俳優は自分自身にたよるしかないのだ。僕は彼らの演技を見たあと、意見をいうだけだ。
Q:なぜ周渝民を選んだのか? 彼は映画の経験はないが。
杜:僕はいつも俳優と話をする。「わざと演じなくていい」と。周渝民はこのことに関しては悪くなかった。彼そのものも二枚目然としている。同時に憂鬱な感じがして、この役にぴったりだった。役をよく把握した彼の演じ方が大好きだよ。
Q:《蝴蝶飛》はスタイルを変えた作品だといわれているが、自分ではどう見ているか?
杜:スタイルを変えたというのは正しくないだろう。戻ったというべきだ。これまで《龍鳳鬥(イエスタデイ、ワンスモア》や《向左走、向右走(ターンレフト、ターンライト)》など多くのラブストーリーを撮っている。ただ多くの人には男性の映画の方がよく知られている。それに僕は煽情的な映画も好きだよ。僕が以前撮った作品には、完全な脚本のものはなかった。今回は違う。以前の作品はたぶん自分勝手だったと思う。今回はある決まった中で撮るという新しい撮影方法を試している。
Q:内容的には《大隻佬(マッスルモンク)》か今回の《蝴蝶飛》か、どちらがより好みか?
杜:人生はひどく現実的で、そしてひどく残忍だ。だから僕が撮る映画は少しロマンティックにしたいと思っている。
Q:《蝴蝶飛》のテーマは無念な思いだが、なぜこれをテーマに選んだのか?
杜:初めて脚本を見たとき、最も感じたことは、多くの物事は変えることが出来ないのだということだ。愛に対しても、生活に対しても、人は自分をいじめ続けている。だから人生でよい結末というのはとても難しい、あちこちに無念な思いが充満しているのだ。by 2008.1.10「羊城晩報」(意訳)