八両金

《八両金》洪金寶(サモ・ハン)、張艾嘉(シルヴィア・チャン) 
張婉婷(メイベル・チャン):監督 1989年 DVD


アメリカへ渡り16年、タクシー運転手の八両金(洪金寶)はグリーンカードを取ったのを機に、友人たちに借金をして故郷に帰った。家を尋ねると、両親と妹は台山に越していた。幼なじみの烏嘴婆(張艾嘉)が結婚のため台山へ行くというので、烏嘴婆と弟と八両金は一緒に台山へ向かった。車を壊して船で台山に向かううち、烏嘴婆と八両金は心を通わせるようになるのだが・・・。


張婉[女亭]の移民三部作の最後の作品、ようやく見ることが出来た。1作目は《非法移民》(id:hkcl:20050411)、2作目が《秋天的童話(だれかがあなたを愛している)》。洪金寶がコメディでもアクションでもない文芸作品に出演しているという珍しい作品でもある(笑いを取る場面は少しある)。
広州の田舎を飛び出しアメリカへ。英語も満足に出来ず、タクシー運転手になっている八両金は、たった1度だけ手紙を書いたが、その後は音信不通。田舎を出る時に、飼っていた犬のことで妹と喧嘩をしたことがずっと気になっていた。ところが家に帰ってみると妹はそんなことはすっかり忘れている。父母も犬も年老いていた。
アメリカもそれほどいいところではないと考える八両金と、そのアメリカへ嫁いで行こうとする烏嘴婆が、現実と夢の対比となっている。烏嘴婆は八両金に本当は香港へ行きたいといい、八両金は烏嘴婆に世界で最大の唐人街は香港だと話す。大陸人にとって、自由には行けない香港も唐人街の1つなのだ。


この映画の舞台は広東省の台山。昨年行った開平市(id:hkcl:20071020、id:hkcl:20071021)のすぐ隣りにあたる。映画では開平にあったのと同じような[石周]樓が登場し、似たような風景が広がっていた。開平は華僑のふるさとと言われており、ここから海外に渡った人が多い場所。隣の台山も同じような環境だったのだろう。希望と夢を抱えて旅だち、成功したものは故郷に送金し、[石周]樓や堅牢な住宅を建てた。しかしその影には夢破れた人や、夢半ばで田舎に戻った人もいたのだろう・・・。開平に行った後では、より映画の状況が理解できた。


ストーリーだけを書くと妙にしんみりしてしまうが、威勢のいい烏嘴婆と洪金寶の掛け合いや、烏嘴婆の弟、古い風習にとらわれている産婆、そしてなにより洪金寶の存在が、適度な笑いをもたらしている。最後の洪金寶の表情はとてもいい。しかしイメージとは恐ろしいもの、やはり洪金寶を見るといつでも画面がコメディに変身してしまいそうな気がするから困る。


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