秘岸(迷果)

《秘岸》莫文蔚(カレン・モク)、蒋雯麗、陳奕迅(イーソン・チャン)、曾志偉(エリック・ツァン)、檀健次 
張一白(チャン・イーバイ)監督


タクシー運転手の父親(曾志偉)は有る夜、事故で長江に車ごと落ちて行方不明になった。父が乗せていたクラブの女性(莫文蔚)は、足を骨折する重傷を負った。母(蒋[雨/文]麗)は、出来る限りの誠意を尽くそうと女性を家に連れて帰り完治するまで面倒を見ることにした。母は昼は病院で人間を診て、夜には動物病院で動物を診ていた。息子は一緒に暮らすことになった女性が何かと気になる様子。母は実は妊娠しており、父の亡くなったいま、どうしたらいいものかと思いなやんでもいる。そんなある日、動物病院にやってきた男(陳奕迅)を知る。男は香港から重慶にやってきて、精神科のクリニックを開いているという・・・。


重慶を舞台に息子の成長と、それぞれが抱える秘密を描いていく。
足を怪我するクラブの女性に扮する莫文蔚、おみ足をつねに披露しているこの役、美しいおみ足を持つ莫文蔚にはぴったりの役。ひょっとして足で選んだのではと思うほど。ただし彼女、大陸の女性には見えないと思っていたら、劇中広東からやってきたという台詞があったが、北から南に行くのは分かるが、広東から重慶は少々無理はなかろうか? 母の蒋[雨/文]麗、こまったような顔や強気の顔、あきらめたような顔など、さまざまな細やかな表情を見せて上手い。
息子の檀健次は、映画の中でしっかりとその成長を見せる。最初は同級生の少女に淡い恋心を覚え、次に莫文蔚に好奇心を抱き、しまいには莫文蔚に恋をする。父の死を信じられず、父が最後に聞いていた音楽をバックに踊りまくる。そんな彼が最後には顔も心なしか大人になり、心に秘密を抱えるようになる。


前作《好奇害死猫》(id:hkcl:20080116)と同じように話しは作り過ぎの感もあるし、香港と大陸の俳優が同じ画面にいる違和感もないではないが、この《秘岸》が奇妙ではあるが魅力的に見えるのは、息子役の檀健次の存在だと思う。彼が大陸の俳優(つまり母親役の蒋[雨/文]麗)と香港の女優(莫文蔚)の、物語の中でも2人の中間に位置すると共に、2人の性格の違う女優の中を取り持つ役割を果たしていると思えるからだ。なお言語は北京語。
少し調べてみると、息子役の檀健次が莫文蔚に欲情してトイレで押し倒すシーンの一部が電検によってカットされたようだ。これで今年の香港国際電影節の上映に間に合わなかったのかもしれない(確証はなし)。
2008.8.27@UA朗豪坊(夏日國際電影節)


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