証人(ビースト・ストーカー/証人)

《証人》謝霆鋒(ニコラス・ツェ)、廖啓智(リウ・カイチー)、張静初(チャン・ジンチュウ)、張家輝(ニック・チョン)、鍾舒漫(シャーマン・チョン)、苗圃、姜皓文(フィリップ・キョン)、郭政鴻(デレク・クォック) 
林超賢(ダンテ・ラム):監督


血気さかんな刑事・唐飛(謝霆鋒)と新爺(廖啓智)は銀行襲撃犯・張日東(姜皓文)を追跡中、自らの車は事故で大破、さらに誤って少女を射殺してしまった。少女は弁護士・高敏(張静初)の上の娘だった。
目に入ったガラスの破片でいずれは目が見えなくなってしまう洪(張家輝)は、どんな仕事も引き受けている。彼には寝たきりの妻がいた。張日東の裁判が近づいたある日、裁判を担当する弁護士・高敏の下の娘が洪に連れ去られた。誘拐犯は高敏に張日東有罪の証拠隠滅を要求してきた。高敏の娘誘拐の現場に居合わせた唐飛は、署には連絡せず、自ら娘の行方を探そうとするのだが・・・・。


林超賢はコメディ風な作品も撮っているが、やはり《野獣刑警(BEAST COPS 野獣刑警)》(陳嘉上のと共同監督)や《重装警察》といったハードな作品が印象的だ。この《証人》もこれらのテイストを受け継ぐ、ハードでヘビーな作品。


主演の謝霆鋒は髪も短く刈り込み、顔に傷もつけ、これまでのハンサム然としたイメージから一皮向けて、さらに大人っぽく、憂いもたたえて出色。私生活でも結婚、子供の誕生、さらにスキャンダルに巻き込まれるなど、さまざまな人生経験も無駄ではなかったと思われる。事故とはいえ子供を殺してしまったことの罪にさいなまれ、さらに残った娘をなんとか自分の手で救い出そうと暴走する刑事の心をあますところなく表現している。子供に対する表情が自然でリアリティがあり、もともと彼が持っている反抗的雰囲気がうまくいかされている。新爺に「彼女のためではなく、自分のために罪を償おうとしているだけではないか」といわれているように、当初は償いのためだけに、そして最後には自分ができる限りのことをするだけ、という主人公の心境の変化をも観客に納得させるだけの演技を的確に見せている。この映画を見て、謝霆鋒はもし本人が望むなら、悪役も十分いけるのではと思った。


張家輝は、目が不自由ですでに片目は見えず、もう片方の目で見る世界はモノクロでスクリーンに映し出される。時々挟まれるモノクロの画像が殺し屋の虚しさと荒廃した心を表している。張静初は演技そのものは問題ないのだが、弁護士役で、英語なまりならともかく、国語なまりは違和感がある。かれらにつねに演技は安定している廖啓智、さらに従兄役の郭政鴻を含めた脇が頑強に謝霆鋒をサポートしている。


最後は終わりそうで終わらない。少しくどいほどの後づけがあるが、最後まで見て物語の全てが理解できるようになっている。また武術指導は董[王韋](トン・ワイ)、カーアクションは羅禮賢(ブルース・ロー)が担当し、軽鐵が走る元朗や北角など香港らしい風景が画面に溢れ、《保持通話》(id:hkcl:20080928)につづいて、「香港映画を見た」気にさせてくれる1本。2008.11.29@旺角百老匯


■□08年に見た映画一覧□■


《証人》のロケ地についてはココへ。


ついでながら現在のところ、某さんのおかげでお蔵入りしている《神鎗手》も林超賢が監督。なんとか陽の目を見て欲しいものだ。