紅河

《紅河》張家輝(ニック・チョン)、張静初(チャン・ジンチュウ)、李麗珍(ロレッタ・リー)、李修賢(ダニー・リー) 
章家瑞(チアン・チアルイ):監督


阿桃は子供のころに父も母も亡くした。少女になった阿桃(張静初)は中越国境をひそかに越えて、中国のある村でマッサージ屋をやっている叔母・阿水(李麗珍)の元にやってきた。美しいが少しばかり知的障害のある阿桃は、ある日、警察の手入れを逃れようとして隣に住むカラオケ屋の阿夏(張家輝)の家に潜り込んだ。阿桃は亡くなった父と同じ左の眉の上にほくろのある阿夏に親しみを覚える。阿桃が歌が上手いと知った阿夏は、阿水に阿桃を貸してくれと頼む。2人は仲良くカラオケ屋でかせぐようになる。ふとした弾みに阿桃に女性を感じるようになる阿夏だったが、それは禁じられたものと心を押さえ込み、水商売の女性とうさをはらしていた。ところがベトナム籍の黒社会のボス・沙巴(李修賢)が阿桃を気に入って面倒をみてやりたいと阿水に頼んできて、阿桃はボスに連れ去られる。隙を見てボスのところを飛び出した阿桃は・・・・。


舞台は雲南省のある村、少数民族(阿夏は瑶族だということになっており、劇中に瑶族の結婚式の様子も登場する)やベトナム人役の人が登場するが、主なる出演者は香港の俳優で、言語は北京語とベトナム語というなんとも奇妙な映画。張家輝も李麗珍も李修賢もこちらのイメージどうりの役を演じきっている。張家輝は40すぎだというのに、女に逃げられ嫁も貰わず、自堕落な生活を送っている。そしてボコボコに殴られている。張静初はまたも芸達者なところを見せつけるように、歩き方も表情もすっかり阿桃になりきっている。どこにも黒社会の人間はいるのだろうが、李修賢が演じるとその存在がまるで香港映画だと思う。物語りに破綻もないし、気も衒わず丁寧にとっている。しかし、たとえ監督が中国大陸の人でもこれだけこれだけ俳優が香港人だと、香港映画臭が実に濃密になるものだ。大陸の監督の丁寧さと香港映画俳優のある種の「けれん」が一緒に存在しているので奇妙な感じがするのだろう。
人選や物語りが、香港映画へのあこがれからなら、それもかなり可笑しいが、興行を考えてのことなら、いやらしいし、何か間違っていると思う。なお、エンドロールによるとこの映画には照明、メイクなどに韓国の人が関わっていた。
2009.10.9@香港科学館(中國電影展2009)


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