歳月神偷(歳月神偸)

《歳月神偷》任達華(サイモン・ヤム)、呉君如(サンドラ・ン)、李治廷(アーリフ・リー)、蔡穎恩(イブリン・チョイ)、鍾紹圖(バス・チョン)、夏萍(ハー・ペン)、秦沛(チョン・プイ)、谷徳昭(ビンセント・コク)、許鞍華(アン・ホイ) 
羅啓鋭(アレックス・ロー):監督


1960年代香港、靴職人の父(任達華)と、なんでもうまくまとめてしまう口のうまい母(呉君如)には2人の息子がいた。兄のデスモンド(李治廷)は勉強も運動もよくできる。その兄を自慢に思っているのは8歳の弟(鍾紹圖)。あちこちからちょこちょこと物を盗んではため込んでいるし、授業では先生に怒られ、勉強にも身がはいらない。兄にはフローラ(蔡穎恩)という可愛い彼女もいて、これも弟の自慢だった。


これから見る人のためにストーリーは詳しく書かないでおくが、靴屋の父母、その子供たちの貧しくも心暖まる物語なのだと思っていたのだが、少し違っていた。また、60年代香港がかなりソフィスティケイトされているだろうし、これは羅啓鋭とプロデューサーの張婉婷(メイベル・チャン)の作品のすべてに共通していることだが、泥臭いところがまったくない。それは音楽にも色濃く表れていて、60年代なら明らかに粤曲がどこかで使われるのではと思うのだが、それは父が口ずさむことで処理されてしまい、主な音楽はもっぱら60年代のポップス。鳥籠を下げたオヤジも、茶楼も出てこない。兄の彼女の家はお金持ちで、それは半山区の洋館といった具合だ。そのあたりが、香港くささを削いでいるようにも思う。ただしそれを補うように、ところどころにニュースフィルムのようなセピアの映像を差し込んでいる。
しかしそれでも映画は暖かく優しい気持ちがあふれ、涙も頬をつたう1作にはかわりないのだが・・・。
なお物語は、監督羅啓鋭自身の自伝的要素が強く、弟が監督の子供の頃の投影で、兄に捧げる物語になっている。


最後に1つだけ気に入らなかったのは、兄役の李治廷の顔が一番苦手な面長だったこと。違う人選だったらよりよかったのにと、個人的にとても残念。
2010.3.6@新寶戲院


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ロケ地についてはココを参照。昨年4月末、ロケまもない永利街には、まだ靴屋のセット、大道具などが残されていた。