全城戒備(マーシャル・シティー〜超人大戦)

《全城戒備》郭富城(アーロン・クォック)、舒淇(シュウ・ケイ/スー・チー)、鄒兆龍(コリン・チョウ)、呉京ウー・ジン)、張静初(チャン・ジンチュウ)、元華(ユン・ワー)、尹子維(テレンス・イン) 
陳木勝(ベニー・チャン):監督


第二次世界大戦中、日本軍はマレーシアの奥地で毒ガスを使って怪しげな実験を行っていた。実験は失敗、直後に爆発が起こり実験施設は破壊された。
Sunny(郭富城)は、旅回りの演芸団のピエロ。飛刀王と呼ばれた父のように舞台でナイフを投げるのが夢だがナイフ投げを許可してもらえない。兄貴分の張大初(鄒兆龍)らはある晩、当地に眠る日本軍の残した金の延べ棒を探しにきた者があると知り、密かに後をつけてお宝を頂戴しようと考える。Sunnyも張大初の後を追い洞窟にたどり着くが、金の延べ棒とともに、怪しい毒ガスを吸ってしまう。
香港に戻った張大初らの体は醜く変形を遂げるとともに、強大な力を持つようになり、凶悪な強盗団となっていた。マレーシアで亡くなったと思われていたSunnyも、命からがら香港の海岸へたどり着いたが、体は異常に膨張していた。車を止めようとするSunnyは、テレビのニュースキャスター(舒淇)を知り、家まで送ってもらう。翌朝Sunnyの体は元のサイズに戻っていたが、視力が異常に発達していた。
銀行で強盗事件が発生、たまたま通りかかったSunnyはやはり偶然現場にやってきたくだんのニュースキャスターの前で、異常に発達した視力と驚異のスローイングで竹の串を使って、強盗をしとめてしまう。ニュースキャスターはSunnyを英雄に仕立てることにした。
そのころ2人の警察官(呉京、張静初)が、張大初らの対応に当てられていた。Sunnyの姿をテレビで見た張大初らは、毒ガスを吸引しながらも外観に何の変化もないSunnyを捕らえようとする・・。


旧日本軍の毒ガス、凶暴化し醜く変形した悪党、少しおつむの弱そうなピエロ、ナイフ投げ、若い子に取って変わられてしまう旬を過ぎたニュースキャスター、悪に立ち向かう警察官の恋人同士・・・。
毒ガスやピエロ、ナイフ投げ(飛刀)、悪に立ち向かう1組の恋人同士の警官といった哀愁ただようアイテムとSF的悪という組み合わせが、見ていて非常に居心地が悪い。呉京の顔に髭をつけたのは好かったのだが、恋人同士の警官の会話は洒落たつもりなのだろうが、普通話呉京の口から発せられるとむずがゆいことこの上ない。郭富城の愚直さもまた、居心地の悪さ増幅する。ピエロの郭富城は、劇中でもピエロな役回りで、一生懸命演じれば演じるほど、あなかなし。郭富城は肉体そのもののサイバーっぽさとは違い、表情や存在は非常にウエットで感情過多。父を思う場面で挿入される子供の頃の思い出のシークエンスは、これまた感傷的で映画《父子》かとみまごうほど。こんな居心地悪さが全編を覆っていて絵空事をより空々しくしてしまう。
それにしても陳木勝は何をどう間違えて、こんな作品を作ってしまったのだろうか。。。ある意味珍品。
2010.8.12@新寶戲院


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