血染杜鵑紅

《血染杜鵑紅》呉楚帆、白燕、小燕飛、葉萍 
李晨風:監督 1951年 モノクロ 粤語 無字幕 真明


戦争により上海での商売に失敗し香港へやってきた李明(呉楚帆)は叔父を訪ね窮状を訴える。叔父は自分の会社に甥(?)を雇い入れてやる。会社は先代の未亡人・陳太(白燕)が社長となって取り仕切っている。李はある雨の夜に未亡人を邸宅まで送っていくことになり、二人に関係が出来る。未亡人は李明を抜擢、マネージャーの職を与える。李は未亡人との結婚を望むが、未亡人は承諾しない。そんな頃、李明はかつて結婚を誓ったが戦火ではぐれ亡くなったと思っていた歌手の小芬(小燕飛)に巡り会う。小芬は自分を贔屓にしている資産家を袖にしたため、資産家は小芬に貸した金を即刻返すように要求する。それを知った李は、未亡人に頼み金を工面するが、その代わり小芬とのつきあいを禁じられる。金があれば自分も自由になれると、李は金相場に手を出す。さらに李は密かに小芬との逢瀬を重ね小芬は妊娠を知る。2人の関係を憎々しく思う未亡人は友人とともに小芬に詰めよりはずみで小芬はフロアに倒れ流産し亡くなってしまう。そのころ李は金相場で大きな損失を出し会社の金をつぎ込んでいた・・・。


この映画、呉楚帆が物語を書いたそうだが、ストーリーが面白い。なんせ1951年なのにすでに女性社長は登場するし、その女性社長はツバメ君(呉楚帆)をつくっちゃうわ、ツバメ君は死んだとおもっていた元婚約者が現れ女社長と手を切ろうするが出来なく、金が欲しいと金相場に手を出し、損をして会社の金に手をつけてにっちもさっちもいかなくなるというように、いまでも十分通用しそうな内容。さらに魅惑の未亡人・白燕のファムファタルぶりもツバメ君となった呉楚帆の焦燥ぶりもすばらしい。
そしてこの興味深い物語を立体的に見せてくれるのがカメラマンの何鹿影(ホー・ロックイン)。当時まだズームも無く重いカメラで、出来うるかぎりの効果を出そうとした努力が伺われる。繊細でかつ斬新な構図、光と闇のコントラスト(光源の位置)などに神経を使ったことだろう。何鹿影、夜のシーンが上手いと言われている。陰影に富んだ部屋の中のシーンはさすが。ただし最後のシーンの屋外のロケでは、Day for Night(アメリカの夜)だが、技術が未熟だったらしくかなり明るく撮れてしまっていた。
上映後、何思穎と劉嶔、さらに見に来ていた舒琪のトークがあった。この映画をこうして見られるだけでも幸運。修復の必要があるとは思うが、現在これより状態の悪いものがあり、そちらの修復が優先とのこと。
2010.8.15@香港電影資料館「捕光捉影・向兩位攝影大師致敬」


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