紫薇園的秋天

紫薇園的秋天
白燕、呉楚帆、張活游、容小意、黎灼灼 
楚原:脚本 秦劍:監督 1958年 
モノクロ 粤語 無字幕


姚霊音(白燕)は家庭教師としてお屋敷・紫薇園にやってきた。霊音が教えるのは一番下の子。美しい紫薇園には家族5人が住んでいるが、広い屋敷は活気がない。父は離れで経を念じており他の家族とは別に生活し、食事時には長男と長女は自室に食事を運ばせ、あとの2人は帰って来ない。一番下の息子と母、霊音だけが食卓についた。
紫薇園のすべてを握るのは大奥様(黎灼灼)。封建的な制度をかたくなに守る郝家の皇帝。父・郝心言はかつて愛した人がいたが、大奥様が反対し結婚できなかった。長男・郝誦詩(呉楚帆)は父とその人の子で、大奥様は孫と認めていないため、卑屈になり家にこもっている。バイオリンと絵を描くのが趣味。長女は好きになった人がいるがやはり大奥様が反対し他の人に嫁がせたが、夫はすぐに亡くなり家に戻っている。夫が亡くなって長い時間が経つが、大奥様は長女の再婚を許さない。長女は悲観的になり自殺を試みたこともあった。次男(張活游)と次女(容小意)は退屈で陰鬱な紫薇園を嫌い、家に寄りつかず、自分たちは反逆者だと言う。
霊音が封建的な紫薇園に改革を起こしていくのだが・・・。


封建的といえども家父長制度は崩壊しており、大奥様(おばあさん)が一家のすべての規則を握っている。子供はもちろんのこと、孫も理不尽な封建的な規則に縛られ苦痛を味わってる。そこに登場する霊音が、陰鬱な長男を解放し生きる目的と目標を与えてやるが、長男の病はますます重くなっていく。長女の元へはかつての恋人が尋ねてきて一緒になろうと言うが、一度は拒絶してしまう。現実に目を向けず逃避する父も、最後には子供を思い、勇気を振り絞って大奥様(つまり自分の母)に意見する。父の言葉に長女は恋人と新たな旅立ちを決心する。


物語が文芸作品的で、モダンな風景(インテリアなど)やモダンな人物造形(バイオリンやピアノを弾いたり、絵を描いたり、ダンスをしたり)は、脚本を書いた楚原の作風が多いに影響しているという(かつて楚原特集で見た映画と雰囲気が非常に近かった)。見ていて興味深かったのはまず住宅の外観。ビクトリア朝風な建築にはベランダがあるなど、内部も西洋風。離れは塔のようになっていて、蔦がからまっている。門にかかるアーケードには、たぶん薔薇のつるが絡んでいる。劇中の中秋節の飾りや花火の仕掛けも、興味深かった。
2011.5.21@香港電影資料館「人人為我、我為人人:中聯電影」


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