最愛

《最愛》
章子怡チャン・ツィイー)、郭富城(アーロン・クォック)、蒋雯麗(チャン・ウエンリー)、陶澤如、王宝強 
顧長衛(クー・チャンウエイ):監督


1990年代初め、山間の村・娘娘廟村では熱病と呼ばれているエイズが蔓延していた。村の学校の教師・柱柱(陶澤如)の上の息子が、金ほしさに村人に売血をすすめたため、多くの人がエイズに感染することになってしまっていた。柱柱の下の息子・得意(郭富城)もそのひとりだった。柱柱は村人に息子の行為を詫び「病の人はすべて自分が面倒を見る。廃屋となっている学校で共同生活をしよう」と提案する。
得意は妻にちょくちょく訪ねて来てくれと話して、共同生活に向かうが妻は見舞いに来てくれない。そんなある日、夫に連れられた琴琴(章子怡)が学校にやってくる。学校ではある日、米が何物かに盗まれる。米泥棒を捕まえようと得意は夜中、学校の屋根に登ると、琴琴も屋根に登っていた。夫にかまってもらえなくなった琴琴と、妻に逃げられそうな得意は、同じ境遇の者同士なことに気づき、愛をむさぼるのだった・・・。


顧長衛の作品はこれまで、《孔雀》《立春》の2作を見ている。どちらかといえば、ドラマティックな物語も遠くから冷静な目線で見ている印象だが、今回は前2作とはかなり雰囲気が違う。それは俳優のせいかもしれない。章子怡は、田舎っぽい服装がよく似合い、演技も文句のつけようがなく上手い。問題はやはり郭富城。郭富城としては一種、「挑戦」といえる役柄。得意は、郭富城に合わせて脚本が書かれていると思うし、いま郭富城が持てるすべての力を注いで演じてると思うが、力が入れば入るほど違和感を感じる。
たとえば、初めて夫へ送られて学校にやってきた琴琴を見た時から、得意は心騒ぐものがあるのだが、カメラアングルも相まって、もうその場から郭富城はどう猛な野生動物のような大きな眼で章子怡を追いかけていく。その後何事につけてもそうで、郭富城の演技がわかりやすすぎる。これまで郭富城が演じてきたのは直情形の人間。今回は本当なら複雑な心理なはずの主人公が、やはり直情形になってしまっている。郭富城をキャスティングした時点でこれは分かっていたことではないか。だとすれば、これはキャスティングの問題、つまりはプロデューサー江志強の問題なのだろうと思う。
2011.6.16@The ONE百老匯


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