愛情在城

《愛情在城》
鄭君熾、Fernando Eloy、歐陽永鋒、杜健康、黎若嵐、黄婷婷:監督


《百年孤寂》《June》《sofa》《蛋糕》《触電》《冰凍的世界》のマカオを舞台にした6つの短編。つなぎ役にマカオ出身のデュオ、Solerが出演している。
《百年孤寂》図書館にかっこいい人がいるらしいと本を借りきた女性が、書架に『百年孤寂』(『百年の孤独』)を見つけて中学時代の淡い恋を思い出す。
《June》1人ぐらしで友人も多くなく恋愛経験もほとんどない洋服屋(仕立て屋)Juneの元に、かつてマカオに住んでいたという男性が尋ねてきて、好意を示すのだが・・・。
《sofa》少々気が強い台湾人女子とマカオ人男子のカップルが、ソファーを車の上に載せて自宅へ運ぶまでに出会う出来事。
《蛋糕》大陸からマカオにやってきた男は、美術館の警備員。ある日、彼のところにブルーベリーチーズケーキが届く。
《触電》屋上で寝起きしている自閉症ぎみの男の子の元に空から不思議な女性が降ってきた。
《冰凍的世界》自分の大切なものをみんな冷蔵庫に入れてしまう男の子が、ある夏、ある少女に出会う。
映画撮影は初めてという人の作品もあり、未熟な部分も多いが、撮りたいという意欲は分かる。中では北京で監督の勉強をしているという女性監督の作品《冰凍的世界》が、もっともよくまとまっていたし一番映画的だった。
監督たちはみなマカオ生まれマカオ育ちだということだが、よそ者の私たちが感じるマカオの風景の美しさ、裏路地の寂れ具合、あるいはカジノのきらびやかさやといった風景描写はいたって脆弱で、彼らは風景にあまり興味がないのかと不思議に思う。またカジノ(やホテル)を題材にした人もおらず(ロケの関係で難しいのかもしれないが)、まるでカジノや豪華ホテルがマカオに存在していないかのようだったのも気になる。


マカオを舞台にした映画(香港映画や他国の映画)、マカオ出身の俳優や監督はいても、マカオ資本で制作された映画は実に少なく、マカオは映画産業不毛の地といっていいかもしれない。2008年、非営利団体「拍板視覺藝術團」は《堂口故事》(やはり短編を繋いだもの)を制作し好評を得て、第2弾として制作されたのが《愛情在城》。今回はかつてマカオを舞台にした香港映画《b420》を撮った[登β]漢強を顧問の1人に迎えている。また廖慶松(編集)、清水宏一(音響)、關本良(撮影)らが協力。マカオは映画に関する知識や技術の集積がないため、映画制作スタッフを集めるもの大変だとか。
2011.9.29@香港亞洲電影節(The One)


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