七重天

《七重天》
謝賢、南紅、呉回、黄楚山、葉萍 
呉回:監督 楚原:脚本 1956年 
モノクロ 粤語 光藝


しがない看板書き屋の程志高(謝賢)と老鼠仔(呉回)は七階立てのビルの屋上の小屋に住んでいる。ある日、志高は母親(と最初は思っていたが実は親戚の叔母)に無理矢理客を取らされそうになった娘・小紅(南紅)を助けようとして警察に2人は夫婦だと嘘をついた。警官はいずれ家を訪ねて2人が夫婦なのを確認に行くと告げたため、志高は小紅を家に連れて帰り、しばらく3人で一緒に住むことにした。志高の申し出にびっくりする小紅に志高は、警官が来て調べが住んだら、すぐに出て行ってくれればいいと話す。しかし気が利き、優しい小紅に志高は心惹かれていき、小紅もまた貧しくともまっとうに生きようとする志高に心を許していった。ついには警官がやってきて、2人を夫婦と認めて帰っていった。出て行こうとする小紅を志高が引き留めた。1941年、日本軍が真珠灣を攻撃、香港にも日本軍がやってきていた。志高と小紅がついに結婚しようという日、志高は日本軍に連れ去られ、海南島へ送られた。別れの間際、2人は毎日12時になったらお互いに名前を呼ぼう、そうすれば心は繋がっていられると誓う。ようやく戦争が終わり、苦役に就かされた人々が船で戻ってきた。小紅らは志高を迎えに埠頭へいくのだった・・・。


物語は本来は舞台劇で、後にフランク・ボーゼイジ監督で映画化された《第七天国Seventh Heaven)》(1927年)を翻案したもの。
1940年頃から1945年にかけての話しで、戦後10年ほどしか経っていない1956年にはかなりのリアリティをもった話しだったのだろと思われる。光藝にしては、都会的な物語ではなく底辺の人々を主人公にしているのと、後の「難兄難弟」モノに発展していく、男2人(謝賢と呉回)の関係が面白い。タイトルロールで新人と表記される謝賢(当時20歳)と南紅(同22歳)が初々しい。後にあまり演技を褒められない謝賢だが、表情はともなく、けっこういい感じにもじもじしてみたり、正義感たっぷりだったりと、後の屈折した役とは違い、正派の明るい役を演じている。南紅の方が実際には2歳ほど年上のようだが、彼女も登場場面ではせいいっぱい可愛い。物語の終盤になると年齢なりの顔になり、卑屈になりそうな謝賢を励まし、最後はハッピーエンドで終わる。
タイトルロールでは高みから見た香港の街(尖沙咀側を望む)が写り、つぎに街に立つビルの屋上がフレームに登場する。住まいは7階立てビルの屋上にある小屋で、となりのビルの屋上とは1枚の板が渡されており、隣に行くにはこの板を渡っていくという設定も面白い。
また、タイトルの《七重天》は「七階立てのビルの上(七重天)」のことで、南紅は「七重天は自分にとっては天国だ」と話す。
2011.11.22@香港電影資料館(百部不可不看的香港電影)


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