도가니(無聲吶喊)(トガニ・幼き瞳の告発)

《トガニ》
コン・ユ、キム・ヒョンス、チョン・インソ、ペク・スンファン、チャン・グァン ファン・ドンヒョク:監督


韓国・光洲広域市の聾学校で起こった教師による生徒への暴行や性的暴力事件を取り上げた映画。詳しくは日本語の公式サイトを参照。http://dogani.jp/index.html


(ねたばれの可能性あり)ショッキングな事件であるため映画を見ることに多少の戸惑いがあった。はっきりいえば気が重い。
コン・ユ演じる主人公の性格付けが実際の人物にどれほど近いのか分からないが、映画では1人の普通の人物として描かれている。つまり英雄でも熱血漢でもなく、1人の普通の教師が事件を告発していくということになっている。不思議と映画はある静けさを持って描かれている。それは被害者の少年少女たちが聾唖者であることに由来するのかもしれないが、過度な感情に流されることなく事実を伝えようという姿勢の現れではないかと思う。子役たちの演技に瞠目するが、それゆえに彼女たちの心理状態を心配してしまう。
まず最初に驚くのは、聾学校に就職した教師が校長から寄付を強要されるところ。主人公が母に相談すると、母は家を売ってまでその金を工面する。これは韓国ではよくあることなのだろうか。それともこの事実だけで、すでにこの学校は少しおかしいのではと思えるのか、韓国事情の分からない私は判断できないのだが、日本的感覚ではあきらかにおかしい。
事件の発生場所は田舎の聾学校。事件を市政府に訴えに行くと、担当が違うとたらい回しにされる。そして聾学校の校長も警察も弁護士さえもグル。さらには自分をこの学校に紹介した恩師までもが、加害者の敏腕弁護士とともに金を持って事件を丸く収めるようにいってくる。そして最後には執行猶予のついた判決・・・。
この事件は2000年代に起こったことであり、2005年に事件が表沙汰になっても社会の関心が低かったこと、さらに加害者の判決が軽いものだったことには驚く。その事実を伝えることを目的として映画が作られ、映画上映後になって、事件が見直されようやく学校は廃校になったという。
2012.6.30@UA朗豪坊


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