お嬢さん乾杯

《お嬢さん乾杯》
佐野周二原節子佐田啓二、坂本武、村瀬幸子、永田靖、東山千栄子、森川まさみ 
木下恵介:監督 1949年 松竹


自動車修理工場を経営する34歳の圭三(佐野周二)に、取引会社の佐藤という専務が見合いの話しをもってくる。相手は元華族の令嬢で美人と申し分ない。結婚する気などないという圭三だったが、美貌のお嬢さま泰子(原節子)に一目惚れ。泰子の家は落ちぶれてしまい、家も抵当に入っているありさま。泰子は家柄も趣味もまったく違う新興成金の圭三と結婚しなければならなかった・・・。


木下恵介は《カルメン故郷に帰る》と《二十四の瞳》しか見たことがない。
佐野周二は正当派の二枚目俳優なのだと思うのだが、こういう少し粗野な役もやっていたのか。といっても、見かけはそれほど粗野ではなく、少し乱暴な言葉遣いや態度、ボクシングが好きといったところで表現している。新興成金なので、「お金をかせぐのが上手い。お金はいっぱいある」といった台詞もある。49年当時としては、お金にまつわる事を直裁に話すのはやはりかなり品がないと見られただろう。
没落したことを認められないおばあさまがなかなかいい。孫の泰子がピアノをプレゼントされて「気分が悪くなった」といってみたり、いよいよ2人が結婚という段になって、孫が可哀想だと嘆いたり、泰子のよいところを話すのだが、それがことごとく圭三とはかけ離れたところに泰子がいることが際だってくるあたたりも可笑しくて哀しい。
あとは相変わらず細かいところが気になる。圭三の住まいは西鉄アパートと書いてあり、電話は1階で取り次ぐかっこう。寝室にはベッドがあり、部屋には洗面台もある。当時としてはかなり洒落ている。いっぽう泰子の住まいは門がある屋敷で、居間は洋風だが畳の部屋もあるという和洋折衷な昭和初期の住宅だろう。
あと1つはバー。カウンターとテーブル席がある。椅子もテーブルもシンプルそのもの。ビールは胴の部分が少し膨らんだ型ガラスのジョッキにつがれる。泰子のレースの襟のついた白いブラウス、靴の形も気になる。
全体は軽いコメディタッチで、香港でもところどころで笑いが起こっていた。
2012.8.19@夏日國際電影節(太空館)


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