紮職

《紮職》
陳偉霆、曾國祥、徐偉楝、譚耀文、温碧霞、詩雅、盧海鵬、林利 
陳翊恒:監督


高校生の阿霆(陳偉霆)は、旺角の街頭でオレンジを売る母が地元のヤクザに因縁をつけられたところを助けようとして、こてんぱんに殴られたところを、やはりヤクザ者の耀文(譚耀文)に救われた。この一件以来、阿霆は、友人の阿祥(曾國祥)、阿楝(徐偉棟)と耀文の元に身を預けることにした。学校での成績のよい阿霆は耀文の支援で大学も無事に卒業、さらには友人の紹介で資産家を知り、借金の取り立てを請け負い大金を手にし羽振りがよくなっていった。しかし、用心棒をまかされていたクラブでいざこざを起こしたミッシェル(詩雅)を助けたことからアイリーン(温碧霞)と夫の明(林利)の恨みを買うことになってしまった・・・


古装片、大作と、大陸を主な市場に考えた映画が圧倒的多数を占めるなかで、香港市場のみを考えた映画も少しではあるが作られている。記憶に新しいところでは彭浩翔(パン・ホーチョン)《低俗喜劇》。低予算でリスクを軽減。「大陸を相手にしない」「香港文化の最たるものである粗口満載」の惹句は「彭浩翔ブランド」になっているかのようで、本来ならマイナスな要素を逆手に取ってしたたかに宣伝している。いろいろな意味でうっぷうんの溜まっている香港の観客には大受け。そんな流れを汲んでか汲まずか、本作も大陸は相手にしてないと撮影時から公言していた。
陸相手の勧善懲悪(たとえ勧善懲悪でも最近は脚本もひねりがきいているが)な感覚はすっぱり捨てて、久しぶりの古惑仔ものに胸躍り、懐かしさがこみ上げる。かつての香港映画へのオマージュもいっぱい。阿霆、阿祥、阿楝、耀文、アイリーンと役名と実名が同じというこれまた懐かしい香港映画スタイルを踏襲しているのも、ファンにはちょっと嬉しいところだ。
しかし過去をなぞるだけではなく、話の展開には多少なりとも現代的な味つけが必要。かつてなら譚耀文は何も言わずに陳偉霆を子分にしただろうが、「親に苦しい思いをさせたくないなら、勉強してお金を稼ぐことだ」と解いてみせるし、頭のいい陳偉霆に援助して大学を出してやる。このあたりに、多少なりとも”今”を感じる。またかつて譚耀文が演じていたインテリヤクザを陳偉霆にやらせ、譚耀文はインテリヤクザを作り出すという世代交代も見せてくれる。その譚耀文は久しぶりの香港映画。大陸でドラマなどに出演していたようだが、それも十分肥やしになったのだろう、これまでとは違った役作りで刮目に値する。
陳偉霆、曾國祥、徐偉楝の3人の中では、出番は少ないが曾國祥が一番こなれた感じで、陳偉霆は金を稼いでからのインテリヤクザぶりがやはり譚耀文には及ばず発展途上、徐偉楝はまだまだ、ところどころ台詞が棒読み。ちなみに徐偉楝は俳優の徐少強と雪梨の子供、米雪の甥で現在29歳、歌も歌いモデルでもある。映画出演はこれが2本目になる。
2012.11.03@旺角百老匯(優先場)


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