恐怖份子(恐怖分子)

《恐怖份子》
繆騫人(コラ・ミャオ)、金士傑、李立群、顧寶明 
楊徳昌エドワード・ヤン):監督 1896年 


警官が、ある盗賊のアジトへ踏み込むと窓から少女と男が逃げた。少女・淑安は窓から飛び降りた際に怪我をし、通りかかったカメラマンの青年・小強が病院へ連れて行った。家に戻った淑安は、部屋に閉じ込められて出してもらえない腹いせに、電話帳を見てでたらめに電話をかけていた。偶然その電話を取ったのは小説を書いている女性・周郁芬(繆騫人)だった。少女から夫の子供を妊娠したと言われ、まじめで信頼できる人だと思っていた病院つとめの夫への信頼がいっきに崩壊。そんな時、かつて思いを寄せた沈維彬(金士傑)に出会った・・・


中影がクラシック台湾映画6本を修復したうちの1本。画面は美しい。
繆騫人はこういう内省的な役が似合う。しかし、夫の不貞をきちっと確認もしないし、夫に問いただしたりもしない。たった1本の電話で信じてしまうことはあり得ない。だとすると妻の夫への愛情は実はすでになくなっており、電話はきっかにしか過ぎなかったのだろう。夫は妻を愛しているかもしれないが、理解はしていなかったということか。
ごく普通に見ると、恐怖份子は不良少女の事を指すと思うだろうが、初めてこの映画を見た時(はるか以前、いつだか覚えてない)には、恐怖份子は妻のことなのではと感じたことを思い出した。今回見直して、直後は初見と同じ考えだったが、こうして文章に書いていくと少し違う。少女の中にも、カメラマンの青年の中にも、妻にも夫にも、だれの心の中に恐怖份子(テロリスト)が潜んでいて、いつそれが顕在化するか分からないという静かな恐怖なのかもしれない。ちなみに英語タイトルは「The Terrorizers」。
2012.11.4@香港亞洲電影節(百老匯電影中心)


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