竊聽風雲3(インターセプション 盗聴戦)

《竊聽風雲3》
劉青雲ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、呉彦祖(ダニエル・ン)、周迅(ジョウ・シュン)、葉璇(ミッシェル・イエ)、林家棟(ラム・ガートン)、林嘉華(ラム・ガーワ)、方中信(アレックス・フォン)、銭嘉樂(チン・ガーッロ)、曾江(ケネス・ツァン)、黄磊(ホアン・レイ)、呉孟達(ン・マンタ)、黄奕(クリス・ホアン/ホアン・イー)、羅蘭(ローラン) 麥兆輝(アラン・マック)・莊文強(フェリックス・チョン):監督


陸金強(劉青雲)、陸永富(方中信)、陸建波(林家棟)、陸永泉(林嘉華)の4兄弟は、叔父・陸瀚濤(曾江)の元、強引な手段で新界の土地の権利を買いあさり、新界開発で大きな利益を得ようと画策していた。さかのぼること5年前、陸瀚濤の運転手だった羅永就(古天樂)は、新界開発に反対だった陸永遠(錢嘉樂)を自動車事故で死なせた。5年後出所してきた羅永就を陸金強、陸永富、陸建波、陸永泉らが迎えたが、羅永就は事故で無くした片足を戻してくれと投げやりな態度を見せるが、陸らは利益を羅永就に分けるつもりは毛頭ない。土地開発にあたり4兄弟と陸瀚濤は、大陸の実業家・萬山(黄磊)の力を借りようと考えていたが、陸瀚濤の娘・陸永瑜(葉璇)は、新界原居民の男児だけが土地と家屋を手にすることができる政府の制度に多いに不満を持っており、永瑜をにくからず思っている萬山とひそかに通じていた。羅永就は、刑務所で知り合ったITに才のある祖(呉彦祖)を使って4兄弟の酒に睡眠薬を盛り、盗聴器を仕掛け彼らの動向を探りだした・・・


物語を語るにはまず政府の丁屋政策について知らなければならないだろう。以下wikiから少し引用してみる(この内容は映画の中でも最初に語られている)。
1967年香港の「六七暴動」後、政府は新界の開発に手を付けようと考えたが、新界に元々住んでいる人々(原居民)の支持を取り付けるために「小型屋宇政策」というものをうち出す。これは1980年代に父方が新界の住民と認められた人々(これを新界の原居民とする)の子供のうち18歳以上の男子には、決められた土地内に1フロアの床面積700平方フィート以内の3階建て(高さにも規定あり)の住宅(丁屋)を1棟一生に一度だけ建てていいというものだ。さらに地代はただ。この権利を「丁権」という。もしこの土地を非原居民に売ったり譲渡した時には政府に地代を払わなければならない。新界に行くと3階建ての似たような住宅が並んでいるのは、この丁屋である。
映画では、政府が新しい丁屋建設の申請を受け付けず、これら丁屋の権利をまとめて高層の住宅にしようと考えており、陸瀚濤は政府の計画にのっかって巨額の富みを手にしようとしている。


《竊聽風雲》シリーズ3作目。株に続いて今回も香港ならではの物語で、新界の不動産に絡む話であるが、話しが少し複雑で分かりにくい。劉青雲方中信、林家棟、林嘉華の4人が濃すぎる兄弟。衣装も髪形もどこか垢抜けない田舎者なのだが、一癖も二癖もあり、皆なかなか狡猾。手段を選ばずしかし自らの手を汚さない陸金強(劉青雲)、直情的で粗野な感じが見える陸永富(方中信)、強面で薬物にも手をだしている陸永泉(林嘉華)、賢そうだが色に弱そうな陸建波(林家棟)。劉青雲が上手いのは当然だが、今回は方中信がこの少々粗野な役を、マッシュルームカットという珍しい髪形と共に好演している。《竊聽風雲2》でも悪賢い爺を演じていた曾江は、今回も4兄弟を手先にして悪巧みしている。古天樂は陸一家の中では部外者。自分では同族と思っていても、相手は家族とは思っていない。鬱屈した様子を口数少なく演じている。その古天樂の協力者が呉彦祖。このメンツでは唯一、ITに強そうに見える。そして何より重要なのは今回は死なない(笑)。
こんな癖者の男たちの中に混じって輝いているのが女性陣2人。死んだ陸永遠(錢嘉樂)の妻役・周迅。芯が強く、劉青雲演じる金強の執拗な懐柔作戦にもなびくことなく「土地は売買するためにあるんじゃない。耕す為にあるんだ」という信念で生きている。もう1人は曾江(陸瀚濤)の娘を演じる葉璇。かつては羅永就(古天樂)に思いを寄せていたが、今はその思いを断ち切ろうとしている。さらには自らの利益のためにある壮絶な行動に出る哀しい女の役所を情感たっぷりに描いて見せる。
さらに嬉しいのは脇役として登場する羅蘭姐の健在ぶりや、久しぶりの呉孟達、ちょっと貫禄が出た黄磊など、見知った顔を発見できたことだ。
今回は頭脳戦というより手荒な解決方法が最後に待っており、やり過ぎな感はあるものの、土地という、けしてスマートではない「シロモノ」には、これくらいの手荒さがちょうどいいのかもしれない。


2014.7.2@The Grand Cinema
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