歸來(妻への家路)

《歸來》
鞏俐、陳道明、張慧雯 張藝謀:監督


1970年代初めの話。馮婉瑜(鞏俐)は、娘の丹丹(張慧雯)と2人暮らし。娘はバレエダンサーで才能を見込まれている。父の陸焉識(陳道明)は労改で強制動労を強いられており、夫婦はもう長いこと逢っていない。そんな時、婉瑜の元に夫が逃走した事、さらには家に戻ってくるのではないかと知らされる。しかし「連絡があれば知らせるように、けして逢ってはならない。娘の為にも」と地区の委員に言われ、家には監視がついた。娘はふって涌いた父の逃走で、バレエの主役の座を他の者に奪われ悔しい思いをする。
娘の踊る姿を見たい、妻に会いたいと願う焉識は危険を冒して家にやってくるが、妻はドアをあけようとしない。書き置きをして再び姿を隠す。書き置きを見た妻は夫に会いに向かうが、夫を捕らえようとする者、母の行動を阻止しようとする娘に阻まれてしまう。それから何年かたち、夫は労改から家に戻ってくるのだが・・・


出演者も多くなく、物語も難しくない。鞏俐の演技の巧さがこの映画の総てだと思える。
見えるところまで行っていながら娘と政府に引き裂かれたショックからか、はたまた歳をとって認知症気味なのか、現実を把握できず、5日に焉識は返ってくると信じて何年も夫を待ち続ける婉瑜を演じる鞏俐に圧倒される。派手な演技ではない。細かな表情や仕草、立ち居振る舞いから婉瑜が抱える切なさ、寂しさ、孤独感、希望と絶望、あらゆる心の重さが感じ取れる。物語は深刻なのだが、どこか滑稽に見え、滑稽ゆえに哀しさが溢れている。さらに鞏俐の複雑さと娘の若いゆえの単純さが対比になって、よりいっそう鞏俐の演技が浮かび上がっている。


2014.7.2@百老匯電影中心
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