甄子丹、王寶強、楊采妮、白冰 陳徳森:監督
2014年 DVD
ネタバレの可能性多いにあり。内容を知りたくない方は読まないでください。
奇妙な交通事故が発生、被害者は体の十数カ所に殴られた形跡があった。警察学校の武術教官・夏侯武(甄子丹)は、3年前殺人を犯し刑務所に入っていた。彼は刑務所のテレビから流れるこの事故のニュースを聞き、「今すぐに佛山に電話を掛けさせてくれ」と言い出す。その要求が受け入れられないと知ると突然他の囚人へ暴力を振るい、重案組の陸玄心總督察(楊采妮)に会わせてくれと訴えた。陸玄心が夏侯武に面会すると、「この事件を解決出来るのは自分だけだ。ただし、すぐに自分を解放してくれ。次なる犠牲者は以下の7人のうちの一人だ」と7人の名前を告げて解放を要求したが、陸玄心ははねのけた。しかしまたも殺人事件が発生、それも夏侯武があげた7人の中の1人で、さらには前回と同様の遺留品が死者の元におかれており、同一犯による連続殺人事件と推測された。陸玄心は夏侯武に協力を求め彼を釈放した。だたし、常に連絡がつくようにすることを条件に・・・
武痴な人々の世界(武林)を現代に作り1人ずつ倒していくというお話しで、つまり往事の功夫映画の踢館(道場破り)や天下第一決戦を今やったらこうなるよねという話。物語を作る上では架空の世界(ここでは武林)をどうやって作るのかが問題で、それが上手く作れれば、話しは半分出来た事になるだろう。甄子丹の役は警察学校の武術教官で、さらにはかつて武術に魅入られて”天下第一”を目指そうとし人を殺してしまったと設定したことで、必然的に武痴な人々の世界(武林)ができあがっている。その武林に新たな挑戦者(道場破り)がやってきて、各流派の使い手を次々と倒して自分が天下第一になろうとしている。その手段は悪辣で「武術は人を殺すためにあると」言いきる。さらに彼は刑務所に入っているかつての天下第一・甄子丹との戦いを熱望している。
挑戦者は道場破りよろしく各流派の使い手と相まみえる事になって、1對1の戦いが繰り広げられ、様々な功夫の型とファイトが見られる。刑務所に入っている甄子丹には刑務所から出て貰わなくてはならないので、挑戦者は彼が刑務所から出なくてはならないように仕掛けてくる。物語は複雑ではないが、戦いが必然になるように上手く作ってある。
そしてこの映画で最も喜ぶべきところは相手役・王寶強。強烈キャラの登場だ。《冰封侠》でも甄子丹の相手を務めている王寶強が不敵な面構えで素晴らしい動きを見せる。さすが少林寺の俗家弟子。これまで誰も彼にアクション映画をオファーしなかったとはなんとも宝の持ち腐れだ。甄子丹はこれまでにも呉京、洪金寶、鄒兆龍などを相手に名ファイトシーンをいくつも作ってきたが、今回の王寶強はなんといってもキャラが強烈。武痴の塊となって狂気をまとって甄子丹に挑んでくる姿は目に焼き付く。悪役はふてぶてしく憎たらしく、かつ強くなくてはいけない。相手が兇悪であれば兇悪なほど、主役がよりいっそう引き立つからだ。風貌も含め王寶強は宇宙最強の相手に不足なし。最後の路上でのファイトシーンでは、ドニー得意の長いものも使っていてとてもスリリングで刺激的。また名ファイトシーンができあがった。
さらに上手いと思うのは、2人を追う警官に女性(楊采妮)をもってきたところ。楊采妮はボートで追跡し水に落ち、バイクを走らせたりと熱演。たおやかそうに見えて芯が強い彼女の見た目が、男くさい映画にメリハリを付けている。
ひとつ不満が残るのは甄子丹の師妹を演じる白冰。英皇映画に必ず白冰がついてくるが、いつも演技が硬くていまひとつ。そろそろ突き抜けて欲しいところだ。
最後に英皇所属になった方中信も出演している。警官で楊采妮の上司という無難な役。
その他、カメオでアクション映画にかかわる人々が登場し、アクション映画への愛が強く感じられる。
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